甲本ヒロト(こうもと・ひろと)/1963年生まれ。87年、THE BLUE HEARTSのボーカルとしてメジャーデビュー。その後THE HIGH-LOWSを経て、ザ・クロマニヨンズで活動(撮影/蜷川実花)
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 2月7日に17thアルバム「HEY! WONDER」を発売するザ・クロマニヨンズの甲本ヒロト。音楽とともに生きる日常を語った。AERA 2024年2月5日号より。

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――アルバムをリリースした後は数カ月間にわたるアルバムツアーが始まる。ツアーが終わり、数週間後には甲本ヒロトと真島昌利(以下、マーシー)が次のアルバムの曲を揃え、バンドでのレコーディングに突入する。そのサイクルをザ・クロマニヨンズはずっと続けている。

甲本ヒロト(以下、甲本):そのスケジュールでないと暇になってしまいますから。コロナ禍ではいつものスケジュールが少しずつずれこんで、時間がいっぱいできたので戸惑いました。僕は時間があるからといって、派手に遊びに行く計画を立てるわけでもありません。何日間か休みがあったら、映画を観たり、バイクに乗ったり、昆虫採集に行ったりするぐらい。やっぱりライブをやって、曲を作って、レコーディングをして、っていうのが一番楽しいんです。

一番の恐怖は「寝坊」

 ライブもツアーもスタジオでの制作も、バンド活動は全部が楽しい。だから、寝坊してその楽しみに辿り着けないことが一番怖いです。楽しいことはひとつも取りこぼしたくない。僕はひとりでお酒を飲むのも好きなので、お酒を飲んだりレコードを聴いたりしながら明け方まで起きていることも多い。でもなるべく早く起きて遊びたい。楽しいことが寝坊によってできなくなることに恐怖感があるので、よく寝坊する夢を見ます。起きた瞬間夢だと気づき、「寝坊していなくて本当に良かった」と安心する。でもこれまで致命的な寝坊をしたことはないんですけど(笑)。

――決して頑張らないのが楽しさの秘訣だという。

甲本:楽しむために頑張ったらもう楽しくない。取材は苦手なので今は頑張ってますよ(笑)。ただ、今もなるべく楽しくしようとはしています。普段は楽しくしようとすらしません。全く頑張っていないので頑張ってる人には申し訳ない気持ちがあります(笑)。だから僕のことは応援してもらわなくていいんです。応援されたところでなんの役にも立たないかもしれませんし。

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