炎柱・煉獄杏寿郎。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」公式パンフレットより (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【※ネタバレ注意】以下の内容には、放映予定の映画、アニメ、既刊のコミックスのネタバレが一部含まれます。

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 劇場版『鬼滅の刃』「絆の奇跡、そして柱稽古へ」のワールドツアーが2月2日からスタートした。2024年に放送予定のアニメ新シリーズ「柱稽古編」では、鬼殺隊の日常と、上位実力者である「柱」のエピソードが語られる。黒死牟、童磨猗窩座ら「上弦の鬼」と、鬼の総領・鬼舞辻無惨との戦いを目前にして、隊士たちは努力を重ねていた。そんな剣士たちの力となるのが、命を落としてしまった、大切な人たちとの過去の思い出である。何が人を強くするのか? 炎柱・煉獄杏寿郎との思い出を中心に、『鬼滅の刃』の過去のエピソードを振り返りながら考察する。

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不死身に近い「鬼」と戦うということ

『鬼滅の刃』の物語では「鬼vs人間」の攻防が描かれる。鬼の始祖・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)は、自分の血液(=鬼の血)を人間の体に注入することで、新しい鬼を誕生させていく。彼らは人間を捕食対象と見なし、人の命をかえりみることは一切ない。鬼たちはダメージが一瞬で修復される特別な身体、無尽蔵のスタミナ、人智を超えた異能を持っている。その一方で、生身のまま鬼と戦う人間は、その多くが死んでいくのだ。

 中でも衝撃的だったのは、炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)の死であろう。鬼殺隊の支えであり戦闘の要でもある「強い柱」の死は、隊士たちの心に影を落とした。下弦の壱・魘夢(えんむ)の攻撃に対し、200人の一般市民と、炭治郎たち経験の浅い剣士を守りながらの不利な戦い。その直後の上弦の参・猗窩座(あかざ)との攻防は熾烈を極め、鬼と人間の「肉体のちがい」をまざまざと見せつけられる結果となった。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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「煉獄でさえ負けるのか」