社会人のトヨタ自動車からヤクルトに入団する松本健吾

 昨年のドラフトでは独立リーグから史上最多となる23人(支配下6人、育成17人)が指名されて話題となった。改めてカテゴリー別に見ると高校生が海外の1人を含めて50人(支配下24人、育成26人)、大学生が35人(支配下28人、育成7人)、社会人が14人(支配下14人)となっている。これを見ると社会人出身選手が最も少ないが、企業チームの選手は育成指名しないというNPBと日本野球連盟の申し送り事項があることも影響しており、育成でもNPBを目指す選手が独立リーグへ移籍するケースも目立つ。

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 しかしそんな少数の社会人出身の選手だが、昨年のルーキーでも1位指名の吉村貢司郎(東芝→ヤクルト1位)は故障に苦しみながら先発として4勝をマーク。また大津亮介(日本製鉄鹿島→ソフトバンク2位)、船迫大雅(西濃運輸→巨人5位)がブルペン陣に欠かせない存在となり、野手では福永裕基(日本新薬→中日7位)が97試合に出場して70安打を放つなど即戦力としての期待に応えた選手は少なくなかった。今年のルーキーにも、彼らと同等、もしくはそれ以上の活躍が期待できる選手は確かに存在している。

 社会人出身のルーキーで最注目の選手といえばやはり度会隆輝(ENEOS→DeNA1位)になるだろう。横浜高校時代はプロ志望届を提出しながら指名漏れとなったものの、社会人トップの名門チームであるENEOSで早くから外野のレギュラーをつかみ、2年目の都市対抗では4本塁打を放ちMVPにあたる橋戸賞も受賞している。昨年のドラフトでも武内夏暉(国学院大→西武1位)と並んで一番人気となる3球団からの指名を受けており、高校卒の社会人野手としては福留孝介(元中日、阪神)以来の大物と言えるだろう。

 天才的なバットコントロールに加えて社会人では長打力も確実にアップし、走塁に対する意識も見違えるほど向上した印象を受ける。社会人で主に守っていた外野だけでなく、元々の本職であるセカンドやサードなど内野を守れるというのも大きなプラスである。チームは長く中軸を任されていたソトが退団し、オースティンも故障が多いだけに度会にかかる期待は大きい。1年目から一軍で100安打以上を放つことも十分に期待できるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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投手で「即戦力」として期待したいのは?