直感でお芝居をされる方もいれば、できる限り頭で考え演技に臨まれる方もいると思いますが、私はどちらかというと後者。「自分がこの役を通してできることはなんだろう」といった視点で役づくりを始めています。
物語に深みを持たせる役なのか、それともスピードやテンポを上げる役として自分の役が存在しているのか。もちろん、現場に行けば「頭で考えていたのとは違う」と思うことは多々あります。最終的には現場で監督やプロデューサーさんとディスカッションしながら役を組み立てています。
――2023年は連続テレビ小説「舞いあがれ!」に始まり、「さらば、佳き日」「下剋上球児」といった五つのドラマに出演するなど、多くの仕事と向き合い走り抜けた。作品ごとにどのように切り替えをしながら毎日を過ごしていたのだろう。
氷を口に入れて撮影
山下:自分のなかでは、「作品ごとに切り替えるぞ」と意識しているわけではないんです。現場の空気感によって自然と変わっていく感じでしょうか。TBS系日曜劇場「下剋上球児」は、高校野球をテーマにした物語ということもあり、どちらかと言えば体育会系の現場で。物語の設定は夏だったので、キャストはみな寒いなか12月でも半袖で撮影に臨んでいました。白い息が出ないよう、「スタート」の声がかかるまで氷を口に入れ撮影に臨んだことも。地方ロケがメインでしたが、「みんなが頑張っているから自分も頑張れる」という気持ちに素直になれる、部活動のような一体感がありました。自分がどう考えるかより、周囲の方々や環境により、切り替えができるようになる。そう考えると、色々な方に助けてもらっているな、と感じます。
――乃木坂46のメンバーとしての活動は8年目を迎える。アイドルとしての自分、俳優としての自分を意識的に切り替えることもない。一つ一つの仕事を楽しみに思う気持ちが強いのだという。
山下:いまはお仕事がすごく楽しいので、たとえ忙しくてもスケジュールを見て「明日は誰々さんとご一緒できる」と考えては、楽しみな気持ちとともに現場に向かうことが多いですね。
仕事が忙しくとも、週に何度かは自炊するようにしていて、たとえば冷蔵庫に赤ワインが残っていたら、「牛肉のワイン煮込みを作ってみようかな」「仕事が終わったらスーパーに行こう」と、日々小さな楽しみを感じながら過ごしています。
朝は温かいコーヒーを飲み、洗濯物は溜め込まず、家の掃除をし、毎晩湯船に1時間以上浸かる。自分のなかにそうしたルーティンがあり、忙しくとも崩さないことにより、精神面も安定してきた気がします。
(構成/ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2024年1月29日号より抜粋