AERA 2024年1月22日号

生の感情の瑞々しさ

――16年の大晦日に放映された単発ドラマから数えると、田中が主役の春田創一を演じるようになって丸7年が経過した。「その間に、春田の印象や役に対する向き合い方も少しずつ変わってきたところはある」と田中は話す。

田中:単発から、パラレルワールド版(「おっさんずラブ-in the sky-」)、映画を含めると、今回で春田を演じるのは5回目。最初は、自分の中にある感覚をすごく誇張すると春田になる、みたいなイメージで演じていましたが、作中でも時間が経って、春田も少しは成長していると思うんです。僕自身も結構変わったような気がしています。いちばん不安なのは、今の自分の感覚が春田の感情とマッチしてくれるかなという部分。僕としては、春田の役は「作りにいくのは違うよな」という感覚がすごくあるんです。そこだけは、実際に現場で演じてみないとわかりません。

 俳優さんによって、役に対するアプローチの仕方は全く違うと思いますが、僕はどちらかというと技術や理論よりも、自分の生理から生まれた感情を役に重ねるタイプ。同じ感情でも、表現方法って人によって変わると思います。嬉しいときに、両腕を広げて喜びを表す人もいれば、心の中でしみじみと噛みしめる人もいます。そういった心の動きに対する春田と僕の感覚がぴったり重なったときに、生の感情の瑞々しさが役から出ると思うんです。

(ライター・澤田憲)

AERA 2024年1月22日号より抜粋

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