物価が上がっても、思ったほど賃金は上がっていないと感じる人も多いのではないだろうか。住宅ローンの負担が増えても乗り切ることができる「備え」が必要だ(撮影/写真映像部・高野楓菜)
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 日銀の金融政策の見直しで、長期金利に続き短期金利も上昇する可能性が出てきた。住宅ローンの金利はどれくらい上がるのか。AERA 2024年1月22日号より。

【図】変動型住宅ローン、金利上昇でどうなる?

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「住まいのお金相談室」のファイナンシャルプランナー、有田美津子さんが言う。

「首都圏では住宅価格が上がっていることもあって、最近は『すぐ買いたい』という人が減っています。ただ自分たちが買える上限は知りたいようで、『いくらぐらいの住宅ローンなら返せますか』という相談が多い」

 年収など自分の条件で借りられる金額を知り、貯蓄などを合わせて手の届きそうな住宅価格を聞いておいて、予算の枠内で希望に合う物件が見つかったら買う、そんな作戦なのだという。

「2~3年のうちに、とおっしゃる方が多いですよ」(有田さん)

 しかし、その時間軸なら、この作戦はこれから通用しなくなるかもしれない。肝心の住宅ローンの金利が上がる可能性が出てきているからだ。

世界的物価上昇も影響

 住宅ローンには主に借りている間、金利が変わらない「固定型」と半年ごとに金利が見直される「変動型」がある。固定型は長期金利の、変動型は短期金利の市場動向で水準が決まるとされる。

 長らく続いている日銀の超低金利、大規模金融緩和政策の影響で、固定型・変動型とも歴史的な低水準が続いていた。固定型は長期固定で1%を切ることがあったし、変動型は銀行同士の貸し出し競争の激化もあって下がり続け、現在は最優遇金利で0.3%台で借りられる大手銀行もある。

 このため住宅ローンを借りる人の多くが変動型を選び、住宅金融支援機構の調査によると今や約7割を占めている。

 ところが、世界的な物価上昇や日銀の政策変更で、一昨年ごろからまず長期金利が上がり始め、固定型の代表選手である「フラット35」(融資率9割以下)は昨年12月、21~35年固定で1.910%にまで上がっている。そして、ここにきて短期金利にも上昇観測が出はじめたのである。

 短期金利が上昇すれば、変動型で新規に住宅ローンを借りる人はもちろん、すでに変動型で借りている人の返済額も増える可能性がある。

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