会場建設費が注目されているが、かかる経費は他にもある。批判を受けて、自見英子万博相は23年12月、「全体像」として、国が負担する費用を発表した。大阪府市、経済界と3分割する会場建設費の他、日本館の建設費など、国の負担は1647億円と明らかにした。だが、国の負担は1647億円では済まない。これとは別に、地下鉄延伸の費用、中国・四国地方の高速道路の整備費用なども含めれば、インフラ整備経費だけで、総額9.7兆円にも上る。9.7兆円のうち、国の負担割合はわかっていない。内閣官房国際博覧会推進本部事務局の担当者は言う。
「国と自治体、民間の負担割合は、事業ごとに違いますし、国がいくら負担するか、現時点で決まってないものが多い」
事業の経費は底なし沼だ。なぜこんなことがまかり通るのか。元会計検査院局長の有川博・日本大学客員教授は言う。
「国の10億円以上の公共事業では、費用対効果を計算したうえで行う法的義務がありますが、今回は東京五輪と同様に民間の法人が行う形を取っています。行政の事業なら、費用対効果がはっきりしないと、そもそも事業をできません」
建前は万博のための事業としながら、実際はその後のカジノを含む統合型リゾート(IR)のための費用などが入っていても判然としないと有川客員教授。
「目的も、目的に向けてどう成果を上げるかも、不明確だから、事業を進めたい人たちの思惑によって経費は縦横に変わります。万博が終わっても、事業の本当のコストはわからないままでしょう」
「夢洲」の名前は、未来への希望や夢に向けた場所であることを表しているという。この島が、そんな夢のある場所になるだろうか。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年1月22日号より抜粋