関野哲也(せきの・てつや)/1977年、静岡県生まれ。フランス・メッス大学哲学科学士・修士課程修了後、リヨン第三大学哲学科博士課程修了。哲学博士。生きる=哲学することという考えを追求する日々。著書に『池田晶子 語りえぬものを語る、その先へ』がある(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

 フランスで哲学の博士号を取り、翻訳や研究に勤しむ著者の関野哲也さんが発症した双極性障害。大事にしていた仕事を辞め、職を転々とする苦しい日々の中で悩み、もがきながらたどり着いたのは、「考えることは、未来の扉をノックすることだ」という発見だった。さまざまな哲学者を紹介しながら自ら問いを立てる大切さを説き、「哲学すること」へと読者を誘う一冊となった『よくよく考え抜いたら、世界はきらめいていた 哲学、挫折博士を救う』。関野さんに同書にかける思いを聞いた。

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 パソコン画面の向こうで関野哲也さん(46)は少し緊張していた。じっくり考えながら質問に答える表情には、真面目な人柄がにじみ出ている。

 関野さんは少年時代から憧れていたいとこを追いかけて宗教系の高校から大学へと進み、仏文科で哲学と出合った。その宗教団体から派遣されてフランスへ2度留学。帰国後は職員として勤務し、教義をフランス語に翻訳・通訳することを仕事としていた。

「当時は仕事を終えると寮に帰ってごはんを食べ、夜11時まで勉強。朝は6時に起きて仕事に行く。それを2年間続けましたが、苦労とはまったく思いませんでした」

「この仕事が天職」と思えるほどに充実した日々だったが、32歳で双極性障害を発症。仕事も休みがちで、留学させてくれた宗教団体に申し訳なく、悩みは深まるばかりだった。

「アパートで寝ていても苦しくて、生きている意味がない、死にたいと思うようになるんです。でも哲学の問いから世界を眺めると、解けない謎がたくさん見えてきました」

 もちろんその謎は簡単に解けるものではない。たとえば「神とは何か」「私とは何か」「生きるとは何か」「死ぬとは何か」。考え続けるうちに生きる方向に無理やり持って行かれてしまい、死ぬタイミングを逃してしまったという。哲学とは簡単な回答を与えるものではなく、考えれば考えるほど次の問いが生まれてくるからだ。根源的な問いを置いて死ぬわけにはいかない。

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