タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
* * *
明けましておめでとうございます。初詣には行かれましたか。今年も思いがけない楽しい出会いやうれしい偶然がたくさんありますように。
私は、真夏のオーストラリアで家族と過ごす8回目のお正月です。10年前の2014年の元日は、引っ越し直前のガランとした東京の部屋で迎えました。家財は船便でオーストラリアに発送した後で、キャンプ用のテーブルセットが食卓代わり。息子たちの教育のため、オーストラリアと日本で離れ離れの2拠点生活を決断したのです。男3人は豪州に、私は一人で東京に。移住の準備と自分の部屋探しでてんてこまいだったので、ほとんど記憶がありません。
1月の下旬には渋谷の賃貸住宅を引き払い、出発までの10日余りは、私が都内に新たに借りた一人暮らし用の部屋に一家4人で雑魚寝生活。狭かったけど、楽しかったな。当時小学校5年生と2年生だった息子たちは、今年オーストラリアの大学4年生と1年生になります。渡豪10年、早かった、そして長かった! 振り返ると気が遠くなるような道のりです。
14年の2月初旬、私は息子たちと夫と共に、西オーストラリア州パースに降り立ちました。かつて父が駐在していた街、私が生まれてから3歳までを過ごした場所で、息子たちを育てることにしたのです。夫は現地で息子たちのケアに専念し、私はひとり東京で働き、3週間ごとに日豪を往復する生活。よく気力と体力がもったものです。コロナ禍では2年以上も家族と会えませんでした。子どもの成長に伴って往復の頻度は緩やかになり、これからは息子たちが自腹で日本に遊びにくることが多くなるでしょう。
物事は変わり続けます。絶対に変えられないと諦めていたことも、必ず変わります。世界は複雑だけど、今年も一つでも多くのいい変化を起こしたいですね。
※AERA 2024年1月15日号