![会津鉄道[福島県]/沿線は素朴な田舎の風景が広がり、春の訪れとともに一斉に桜の花が咲く(写真:会津鉄道提供)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/840mw/img_36c0a1fe1d1c03855e099bd1bd50be3c198038.jpg)
■「桃の花のじゅうたん」
中央線は、東京駅(東京都千代田区)から山梨、長野を経由し名古屋駅(名古屋市)までを結ぶ、全長約425キロの路線。東京から甲府方面に向かう途中、勝沼ぶどう郷駅(山梨県甲州市)にさしかかると、一気に視界が開けて甲府盆地が広がる。そこにピンクに色づいた花が盆地を埋め尽くしているという。開花は3月下旬~4月中旬だ。
「桜はたいがい、並木になっていて風景が線になります。だけど、桃の木は盆地の斜面に植えられていて平面になっています。それが鈴なりに咲いているので、まるで桃の花のじゅうたんのようです」(宮村さん)
桜の花では、福島県の山あいを走る「会津鉄道」が魅力だという。会津高原尾瀬口(福島県南会津町)~西若松駅(同会津若松市)を約57キロで結ぶ第三セクター。宮村さんはこう語る。
「乗っている間中、車窓からきれいな桜の花を見ることができます」
鉄道に乗るのが大好きな「乗り鉄」の宮村さん。帰路は来た道と同じルートは通らず、「回遊する」のだという。
例えば、会津鉄道では終点の西若松駅からJR只見線と磐越西線を乗り継いで郡山駅(同郡山市)に出て、そこからJR磐越東線でいわき駅(同いわき市)に向かう。途中、夏井川の両岸に5キロ近くにわたって約1千本のソメイヨシノが咲き誇る夏井千本桜がある。車窓からめでることができるという。
宮村さんの楽しみ方は、列車に乗って、駅弁を食べ、車窓の風景を楽しむこと。そして「意外性」があったほうが旅を満喫できると話す。
水戸市と郡山市を結ぶ「JR水郡(すいぐん)線」はそんな鉄道の一つ。歩くことも好きな宮村さんはある年の春、途中の袋田駅(茨城県大子町)から隣の常陸大子駅(同)まで久慈川に沿って土手を歩いた。すると、土手にツクシが群生し、その間にタンポポが咲いている場所があって感動したという。こうした意外な発見が楽しいそうだ。
![JR小海線[山梨県、長野県]/JR線で「標高の一番高い場所を走る鉄道」として知られる。点在する山桜がきれいだ(写真:長野県川上村役場提供)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/e/d/840mw/img_edf1c5ed732245ce3467a6b094906575248826.jpg)
「その意味では『JR小海(こうみ)線』もオススメです」(宮村さん)
小海線は、小淵沢駅(山梨県北杜市)から八ケ岳のふもとを抜け、小諸駅(長野県小諸市)までを結ぶ全長78.9キロの路線。JR線では最も標高の高い地点(1375メートル)を通ることでも有名で、沿線には桜が咲いている。
「桜はソメイヨシノ一色ではありません。小淵沢あたりはソメイヨシノですが、ぐんぐん標高が高くなるにつれ、濃い山桜に徐々に変わっていきます。人の手が入っていない山に自生した桜は、同じ桜でも見ていて楽しいです」(宮村さん)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年4月3日号より抜粋
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