![小川哲さん(撮影/写真映像部・高野楓菜)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/682mw/img_bd4fd6fd55321819d2200cbdf202ae5448836.jpg)
競技クイズを題材にした異色の小説『君のクイズ』。著者で直木賞作家の小川哲さんがクイズの魅力について語った。
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僕がクイズをテーマにした小説を書こうと思ったのは、クイズ自体が問題も答えも文章なので、小説と相性がいいからです。クイズについて調べる過程で、興味深いと思い引き込まれました。
![小川哲『君のクイズ』(朝日新聞出版)定価:1540円(税込み)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/722mw/img_30a64e185eda438e14d37fe1b9fdc96c79584.jpg)
『君のクイズ』でも描きましたが、プレイヤーが正解するということからわかることは、問題の答えを知っていたということだけ。でも観客は何でも知っているのではないかという幻想をプレイヤーに抱く。プロとアマの知識のギャップを使って幻想を抱かせることによって成立するものがある一定の成熟を見せると種明かしの時代がくるのだと思いますが、今がその時代だと思います。
クイズノックはプレイヤーとしての魔法の力のようなものは、魔法ではなく科学だということを明かしましたが、明かす科学者のキャラクターに人気が出ている面もあって、それもまた別の魔法だと思います。
競技クイズの世界のどこに一番魅力を感じたかというと、やはり理屈があるところです。本当にとんでもないことをしているんじゃないかと思えることに一つひとつ必ず必然性がある。
クイズに正解するということには、承認欲求を満たしてくれる効果がある。僕にとって競技クイズの論理的美しさの先にある肯定感、世界に受け入れられる感じとは、問題を作った人と自分の重なる部分を見つけるコミュニケーションでもあります。
クイズは、ピンポンという音で自分が生きてきたことが世界とつながっているという意味付けをしてくれる。好きな小説を聞かれて、読んだことがないと言われるかもしれないと思いつつ作品名をあげて、私も好きですと言われたら嬉(うれ)しいじゃないですか。クイズはそれを10問、100問とできるんですよ、正解したときは。
僕の考えるクイズ像はこの作品で出したので、今は一人のクイズファンとしてクイズを楽しみに見ています。
※週刊朝日 2023年4月7日号
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