前立腺がんになりやすい年代には、前立腺肥大症も起こりやすく、尿が出にくいといった排尿困難、血尿など前立腺肥大症の症状をきっかけに受診したところ、前立腺がんが見つかることもよくあります。
前立腺がん検診が広くおこなわれるようになり、早い段階で見つかることが多くなっています。しかし、進行して見つかる例もまだあります。東京慈恵会医科大学病院泌尿器科教授・診療部長の木村高弘医師はこう話します。
「前立腺がんには骨に転移しやすいという特徴があります。日本では、前立腺がん全体の15%ぐらいは、骨に転移した状態で見つかっています。昔は30%ぐらいでしたから減ってはいるのですが、例えばアメリカは約5%と、先進国のなかでは日本はまだ多いといえます」
前立腺がんの骨への転移は、脊椎(せきつい)や骨盤に起こりやすく、背中や腰などに痛みが生じます。また、骨をつくる細胞が異常に活性化され骨が増えるという特徴があります。腰痛などで整形外科を受診しX線検査を受けたところ、前立腺がん特有の影が認められるとのことで、すぐに泌尿器科に紹介される例がよくあります。
親や兄弟が前立腺がんの場合は、40歳から検診を受ける
前立腺がんの一部には、家族歴が関係しています。親や兄弟に前立腺がんの人がいる場合、前立腺がんになるリスクが2倍程度高いと言われており、注意が必要です。また、前立腺がんの増加には、食生活の欧米化で魚より肉を食べることが増え、動物性脂肪の摂取量が増えたことが影響していると考えられています。
大豆やトマト(リコピン)の摂取は、前立腺がんの発症リスクを下げる傾向があるというデータもあります。しかし、これらを毎日食べれば前立腺がんにならないとはいえず、明確な予防法はありません。
「前立腺がんの多くは、早く見つけ適切なタイミングで治療を受ければ治りやすいがんですから、検診が大切です。検診は、一般に50歳から受けることが推奨されていますが、家族歴のある人は、40歳ぐらいから受けることをおすすめします。働き盛りで忙しいとは思いますが、PSA値をチェックしましょう。また、排尿関連の症状がある場合は、放置しないで、泌尿器科でPSA検査を受けましょう」(木村医師)