個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は「大晦日」について。
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大晦日である。
「おぉ! 今晩の夕飯は俺の大好きなシジミの味噌汁かぁ! これ、二日酔いに効くんだよなあ! 嬉しいなあ!シジミの味噌汁かぁ!」を略して「おぉ味噌かぁ」ではない。
あまりに大雑把な略し方だし、シジミの味噌汁でそんなにテンションが上がる人はあまりいないような気がするし、何より致命的なのは、さほど面白くないということなのだが、こんな書き出しをしてしまうのには理由があるのだ。
興味がないのだ。
興味がないというより、大晦日という節目(ふしめ)に「あらたまる」というのが、なんだろう、苦手というか、照れ臭いのだ。
今回のコラムの配信日が大晦日ということで、この一年を振り返る内容にしようと思ったが、なんかガラじゃないような気がしてきて、結局冒頭のような中身ゼロの書き出しをしてしまったのだ。
もちろんこんな俺でも大晦日は平常心ではいられない。浮き立つような気持ちになったり、この一年を大過なく過ごせたことを静かに、しかし深く感謝する気持ちになったり、来るべき年に決意を新たにしたりする。
そして「節目を大切にする」という日本人の心なり慣習なりは、大切に受け継ぎ、次の世代に引き継がねばと思っている。
たとえばだが、年末に日本人が互いに掛け合う言葉、「よいお年を」は素敵な日本語だなといつも思うし、除夜の鐘を聞くと心が凪(なぎ)のように落ち着く。
大晦日にいただく年越ソバも、違う時期に食べるソバとはなにか違う味わいに思える。大晦日という、一年に一度しかない日に食べているという気持ちが、そうさせてるのかもしれない。
ちょっと待ってください皆さん。例のごとく、何も考えずノープランで書き進めてますが、わたしアレだね、大晦日にあらたまってるね。完全にあらたまってるよね。ごめんなさい私あらたまってました。苦手とか照れ臭いとか書いておきながら、私、大晦日にあらたまってました。あらたまくりまくりしてぃでした。