エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】ガザ地区北部では多くの建物が崩壊していた

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 今は瓦礫(がれき)と化したウクライナの街で、2021年の今頃は人々がいつも通りに暮らしていたはずです。ガザで家を失った人や誘拐されて人質になったイスラエルの人も、22年の今頃は新しい年に期待したことでしょう。黒焦げの建物と戦車の映像を見るたびに、ここに一人一人名前のある人がいたのだと思わずにいられません。一日も早く戦闘行為が止(や)むことを願います。

 真珠湾攻撃が行われた12月8日の前後には、第2次世界大戦に関する番組がいくつか放送されました。その中に、特攻隊員一人一人の出身や経歴を特定し、遺族を訪ねたドキュメンタリー番組がありました(NHK BSスペシャル「特攻4000人 生と死そして記憶」)。専門家の協力のもと、アメリカ軍が記録した特攻の映像と、日本軍の紙の記録とを地道に照合して、軍艦や海面に激突した特攻機に誰が乗っていたのかを、明らかにしたのです。その中には10代の少年志願兵たちもいました。志願せざるを得ない空気の中で特攻隊にされた子たちも。

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