激戦の「Best New Male Artist」(男性新人賞)を制したのは、人気オーディション番組発の期間限定グループZEROBASEONE (c)CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved
激戦の「Best New Male Artist」(男性新人賞)を制したのは、人気オーディション番組発の期間限定グループZEROBASEONE (c)CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved

 近年K−POPが進めてきている「韓流3.0」戦略から生まれたグループの出演も目を引いた。韓流3.0戦略とは、韓国以外の国で、K−POP式のトレーニングと制作システムを使って育成した人材をデビューさせる戦略。今回、その代表格であるNiziUと韓国のオーディション番組の日本版「Produce 101 Japan」シリーズから誕生したJO1とINIが参戦し、成果をアピールした。

 グローバルな香りは、授賞の場面でも感じられた。初日のホストであるチョン・ソミは、英語と韓国語、日本語をミックスして進行。ほとんどのグループには韓国以外の国で生まれたメンバーが属しており、受賞の喜びも、日・韓・英・中国語とバラエティー豊か。アーティストたちの言葉は、リアルタイムで翻訳され、スクリーンに字幕が出るようになっていたが、観客の多くは韓国語を理解しており、即座にリアクションしていたのも、日本におけるK−POP人気の歴史を感じさせた。

TOMORROW×TOGETHERのHUENINGKAI(写真)とTAEHYUNは透き通る高音ボイスで「ENDLESS RAIN」を情感込めて歌い上げた (c)CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved
TOMORROW×TOGETHERのHUENINGKAI(写真)とTAEHYUNは透き通る高音ボイスで「ENDLESS RAIN」を情感込めて歌い上げた (c)CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved

最新技術満載の演出

 演出も実に華やかだった。炎や花火の特殊効果はもちろん、スクリーンから巨大なロボットの手が飛び出てくるように見えるVR技術や、巨大スクリーンを使ったプロジェクションマッピングなど最新技術のオンパレード。観客たちは遠隔操作で色を制御する「無線コントロール対応ペンライト」でステージに合わせた光の演出に参加できるようになっており、東方神起のステージでは、東方神起ライブの名物レッドオーシャンが出現。SEVENTEENのステージでは7色の光が広がり、会場は多幸感に包まれた。また、テレビで観ている人のみ観られる演出として、楽器やグループ名が空中に映し出されるAR(拡張現実)も使われた。

 大賞は四つ。SNSとホームページを使ったファン投票により決まる「Worldwide Icon of the Year」は、6年連続となるBTSが受賞。23年最も輝いたアーティストに贈られる「Artist of the Year」はデビュー2年目のNewJeansが手にした。また楽曲のダウンロード数などから決まる「Song of the Year」は、NewJeansの「Ditto」が選ばれた。四つの大賞のうちの一つ、「Album of the Year」の受賞者は、2日目のエンディングに発表された。プレゼンターが「『Album of the Year』はSEVENTEENの『FML』!」と叫ぶと、4万人の観客が一斉に大きな歓声をあげた。「FML」は、23年4月に発売されたSEVENTEENの10枚目のミニアルバムで、全世界で620万枚を売り上げ、K−POP史を塗り替えた作品だ。

HYBEの圧倒的強さ

 15年にデビューして以来、これがMAMAでの初の大賞受賞となるSEVENTEENは、結果を聞くやいなや、円陣を組み、大喜び。壇上には怪我で休養中のS.COUPSも登場し、会場は大歓声に包まれた。JEONGHANは、流ちょうな日本語で「CARAT(ファンネーム)の皆さんが応援してくれる言葉がギューッと力になりました。この日をCARATの皆さんに捧げたいと思います」と感謝の弁。グループの音楽制作の要であるWOOZIは、言葉に詰まりながら「ここまで来るのが本当に長かった。これからも一生懸命頑張って、良い音楽をお届けできる素晴らしいチームになりたいと思います」と決意を述べた。SEUNGKWANは、サブステージで見守る同僚たちに向け、「皆さんのステージを観ながら、リスペクトする気持ちが強くなりました。受賞したチームも賞を逃したチームも皆さんかっこいいと思います。この職業は楽ではありませんが、一緒に頑張って活動していきましょう」と熱く語りかけると、「この場にふさわしくないかもしれないけど」と前置きをしつつ、涙ながらに「僕たちのチームをいつも応援してくれた僕の友達ビンに心から感謝の言葉を伝えたい」と4月に天国に旅立った親友ムンビン(ASTRO)にメッセージを送った。

 今回大賞を受賞した3組は、全てBTSを生んだHYBE傘下の所属アーティスト。HYBE一強時代を印象付ける一夜となった。(ライター・酒井美絵子)

AERA 2024年1月1日-8日合併号

[AERA最新号はこちら]