ポテチの研究の前は、車を運転する時の危険感知シグナルの開発に携わり、音や映像の刺激を使い、運転手に効果的に危険を知らせる方法について研究していた。
この研究では、危険を知らせる音が運転手の後ろから聞こえてきた時のほうが、横から聞こえてきた時よりも、注意がすばやく前方に向くことを突き止めた。研究の成果は、実際に某メーカーのトラックに生かされている。
ボランティア200人を集め、防音室でポテチを食べる
ポテチの研究を思い立った当時は、洗剤会社と連携した研究で「パリパリに乾いてしまった手をすり合わせた時に音を聞こえにくくすると、手が実際よりもしっとりしていると感じる」という発見を実用化しようとしていた。ある日、飲み屋でおつまみのポテチを見て、「ポテチのパリパリ感も音に影響されるのでは?」とひらめいたことが、イグノーベル賞受賞研究を始めたきっかけだった。
そこで2人はボランティア200人を集め、1人ずつ防音室でプリングルズのポテチを食べてもらった。プリングルズを選んだ理由は、ポテチ1枚1枚が均一に作られていて、公正な比較がしやすいからだ。また、食べる時は前歯だけでかじってもらい、噛み方によるばらつきが生まれないように配慮した。
ボランティアには防音室でマイクと向かい合わせになり、ヘッドフォンを着けてもらった。マイクはボランティアがポテチをかじった時の音を拾っており、ヘッドフォンからはマイクが拾った音を流した。つまり、自分がポテチをかじった時の音が、ヘッドフォンを経由して聞こえる仕組みになっている。
その際、ボランティアには知らせずに、ヘッドフォンに流れる音を研究者たちがコンピューターで操作し、音を大きめにしたり、高音域の音(2~20キロヘルツ)を強めに出したりした。