――日米とも、金融政策が転換点を迎えています。

 日本銀行は、これまでに長短金利操作(イールドカーブコントロール=YCC)を修正し、長期金利を力ずくで抑え込む姿勢から、市場の裁量や自律性に委ねる方向に転じたとみています。私はこの段階で緩和策の半分は事実上、すでに終わったと考えています。

 結論から言えば、こういった金融正常化に向けた動きは、市場に対して必ずしもネガティブな要素にはならない。

 確かに、緩和策の修正や正常化を極端な形で進めれば、市場にショックを与え、せっかく続いてきた景気回復の流れを頓挫させる恐れがあります。でも日銀だってそんなことは分かっているはずです。非常に用心深く進めることになるでしょう。

 現時点で米連邦準備制度理事会(FRB)は24年に3回の利下げをすると想定されています。しかし、米国の景気はそれほど悪くはならないでしょう。このため、市場が見込むほど大幅な利下げをするとは考えにくい。

 米国が金融引き締めを行う一方で、日本が緩和策を続けるという、今までの構図が逆転することで、ドル・円相場はいったん円高・ドル安の方向に傾く場面もあるはずです。

 しかし、前述したように、日本の金融正常化に向けた動きは慎重になるとみています。米国も、市場が想定するほどの利下げは見込みにくい。

 であるなら、ドル・円相場の動きは限定されると考えられます。日銀が緩和策を修正したり、米FRBが利下げを行ったりした場合、一時的に1ドル=130円台に突っ込む局面があったとしても、そのまま同130円台で定着するような可能性は低いように思います。むしろその後は揺り戻しが生じ、23年に続いた同140円台や150円台といった水準で定着していく可能性の方が高いかもしれません。

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