2020年に登場した2代目「レヴォーグ」(写真提供/株式会社SUBARU)
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 隔週刊「トミカ歴代名車COLLECTION」は、タカラトミーが厳選した歴代名車を、その詳細を解説したマガジンとともにお届けするシリーズ。スポーツカーからはたらく車まで、毎号付いてくるトミカはオリジナルデザインで、これを集めると、唯一無二のトミカ・コレクションが完成する。

 2週間に一度の発売日には、マガジン巻末に収録されるリレーコラム「My car, My mini car」をAERAdot.にも配信。「スバル レヴォーグ」を取り上げた12月26日発売の16号のコラムは、自動車研究家・山本シンヤによる「レヴォーグは〝日本人のためのレガシィ〟」だ。

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 1980年代、排ガス規制を乗り越えた日本車が大きく成長を遂げるなか、スバルだけはそのブームにまったく乗れずにいた。いや、それどころか、他社による買収や倒産の危機が報道され、厳しい局面に立たされていた。当時の主力モデルは「レオーネ」。悪路走破性以外はライバルに歯が立たず、独自技術の水平対向エンジンや四輪駆動も、むしろ足を引っ張っていた感もあった。

「このままでは〝技術のスバル〟とはいえない」という危機感が社内に広がり、「本気でいいクルマをつくる」という流れが生まれる。開発コンセプトは単純明快で「日本で一番いいセダン/ワゴンをつくる」。その実現のために、プラットフォームはスバル1000以来となる全面新設計で、サスペンションは4輪ストラット。エンジンも新設計の水平対向EJ型)が搭載された。

 開発手法にも大きくメスが入り、これまでの「縦割り&技術主導」から「プロジェクトチーム制」に変更。さらに、走りの味付けは一人の実験担当者に委ねられた。現在STIに所属する辰己英治氏だ。彼はベンチマークとしてメルセデスベンツ190 を徹底的に解析。プライベートで参戦するダートトライアルでの経験を活かし、舗装路でも通用する「曲がる四輪駆動」を完成させた。開発 コード「44B」と呼ばれた初代「レガシィ」である。

 初代レガシィの走りは高く評価され、スバルのイメージは「積雪地域で乗るクルマ」から「走りにこだわりのあるメーカー」へと大きく変貌したのである。

 その後、レガシィは世代交代を重ねつつ熟成されていくが、それを紐解いていくと「グランドツーリング(GT )性能」の進化であることが解る。スバルの考えるGT性能とは何か?それは「より速く」「より遠くに」「より安全に」「より快適的に」、そして「より愉しく」――。つまり、一つの性能にこだわって特化するのではなく、〝総合性能〟の追求。そのためにレガシィには、その時代におけるスバルの最先端技術が投入された。

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レガシィとレヴォーグのコアターゲットは?