対抗の1番手は、『全日本』2位の大東文化大だ。近年、常に上位を争っている実力校であるが、そのチームに今年、帝京長岡高からケニア出身のサラ・ワンジル(1年)が加わった。ワンジルは5月の関東インカレ、9月に日本インカレと10000mで独走優勝すると、10月の『全日本』では5区を走って期待通りに区間賞の走りを見せた。さらに高校時代から優れた実績を残す同学年の野田真理耶(1年)が6区で区間5位だったことに加え、平尾暁絵(1年)が2区で区間4位、蔦野萌々香(1年)が4区で区間3位の走りを見せており、『富士山』への手応えを掴んでいる。正しいコンディショニングと少しの“流れ”があれば、52秒差は十分に逆転可能だ。

 同じく立命館大も力を持っているチームだ。前年までの大黒柱・飛田凛香が卒業したが、立命館宇治高時代から姉妹で切磋琢磨を続けてきた村松灯(3年)、村松結(2年)の姉妹コンビが注目の存在で、『全日本』では中地こころ(3年)が4区で区間賞、6区では小林朝(4年)が区間2位と経験値の高いランナーがしっかりと結果を出した。『富士山』でも上位争いは間違いなく、“西の雄”として2017年以来12度目の“復活優勝”も期待できる。

 その他、『全日本』で4位の城西大、5位の日本体育大、さらに『全日本』では6位だったが、昨年の『富士山』で2位と躍進した大阪学院大も期待だ。だが、それらのチーム以上に注目したいのが、やはり拓殖大である。『全日本』では後半区間に崩れて12位フィニッシュとなったが、何といってもこのチームには不破聖衣来(3年)がいるからだ。

 大学1年だった2021年の『全日本』で6人抜き、『富士山』で10人抜き、同年12月の記録会では10000mで日本歴代2位(当時)のタイムを叩き出すなど“異次元の走り”を披露した陸上界のニューヒロイン。その後、体調が整わず、故障も重なってスタートラインにも立てない苦しい日々を過ごしたが、今年の『富士山』では無事にエントリーされた。

次のページ
不破聖衣来の快走はあるのか