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 海洋生物学者のアビー(ミア・ワシコウスカ)は母の病を知り、オーストラリアの海辺の町に帰郷する。アビーは8歳で巨大な魚ブルーバックと出会ったときのこと、活動家として闘う母とは別の方法で海を守ろうと故郷を後にした日々を思い返す──。ベストセラー小説の待望の映画化となった「ブルーバック あの海を見ていた」。監督と脚本を務めたロバート・コノリーさんに本作の見どころを聞いた。

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 私は多くの人と同じく環境問題について危惧しています。同時に私は楽天家で、人が何か行動を起こせば変化を起こすことが可能だと信じています。そんな思いを込めて本作を作りました。実際に原作者のティム・ウィントンは映画に登場する母ドラのように、湾を守る活動をして大きな成功を収めています。海岸近くでの漁を禁止したことで一度はいなくなった魚やクジラが戻り、珊瑚礁も元に戻ったのです。小さな行動であれ、一人一人が状況をよくしたいと行動すれば、それは力になるのです。

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 さらに母と娘の関係性についても描きたいと思いました。アビーは母に触発されて海洋生物学者になります。母と娘は違う方法ながら「環境保護」という目的で結びついています。実は原作の主人公は少年でした。私には娘が二人いるのですが、今回の脚本を見せたところ「いいけど、また男の子が主役なの?」と言われてしまったんです(笑)。ティムに「主人公を少女にしてもいい?」と聞くと「もちろん」と快く応じてくれました。それに環境活動家には女性が多いんです。グレタ・トゥーンベリさん然りです。海洋学者にも女性が多い。ですから女性を主人公にしたことは適切だったと思います。

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 私は社会問題を題材に映画を撮ることが多いのですが、決してお説教をしたいわけではありません。映画は人にパワフルに語りかける力を持っています。だからこそ人々を不安にさせたり、うんざりさせすぎたりすることのないように伝えることが大事だと思います。映画を観た若い人が「私も海洋生物学者になる」と言ってくれたんです。人は自分が好きだと思ったものはより大切にできるものです。本作を観て多くの人が海を愛し、海を守るアクションを起こしてもらえればと願っています。

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(取材/文・中村千晶)

AERA 2023年12月18日号