辻氏をよく知る元検察官に、こうした尋問の詳細を話すと、

「辻氏は検察官の中でも頭がいいことで有名です。理解が早く、先を読み、いくつものストーリーを想定しながら動ける。大臣や検事総長らの質問にもすぐに相応の答えが出せる。もちろん検事総長候補の筆頭でした」

 と人物評を語った上で、

「検察官は、まず検察庁法が前提にあり、国家公務員法からの定年延長なんて想像もしません。辻氏だからこそ思いつき、実現できたと評判になっていたほどです。『安倍政権のための黒川氏の定年延長なので、辻氏の検事総長は決まり』という話も流れたほど検察内では大きな功績とされました。それほど評価の高い、切れる辻氏が、法廷で答弁に詰まっていたなんて信じられません。よほど表に出しにくい話でもあったんでしょうか」

 との感想を漏らした。

 裁判終了後、上脇教授はAERA dot.の取材に、

「辻氏は、解釈変更をしたのに、全国にたくさんいる検察官にはそれを周知していないとはっきり言いました。黒川氏以外の検察官は誰も知らないなかで定年延長が閣議決定され、大きなニュースになった。全国の検察官はびっくりだったわけですよ。これこそ安倍政権が、黒川氏にさえ適用できればよかったという証明です。今後の法廷でさらに証人を呼んで追及したい」

 と述べた。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

衆院法務委で野党の質問に答弁し、東京高検の黒川弘務検事長の辞職に関して進退伺を安倍晋三首相に提出したことを認める森雅子法相=2020年5月(役職はいずれも当時)
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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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