『超訳 養生訓 病気にならない体をつくる』貝原 益軒,奥田 昌子 ディスカヴァー・トゥエンティワン
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 季節柄、風邪を引いて体調を崩してしまったり、飲み会で暴飲暴食が続いたりといった人も多いころかと思います。できるだけ健康に気をつけながら心身ともに健やかに生きたいと願う人に今回おすすめする書籍が『超訳 養生訓 病気にならない体をつくる』です。

 「養生訓」とは江戸時代前期から中期に差しかかる1713年に出版されて以来、日本で広く長く読み継がれてきた健康書の古典です。そこには、儒学や仏教、武士道の考え方、そして医師でもあった著者・貝原益軒が実践してきた養生体験が豊富に盛り込まれています。そのエッセンスを令和の現代にも活かせるよう、現役医師である奥田昌子さんがわかりやすく訳したのが同書です。

 皆さんの中には、「300年も前に書かれた健康書が今の時代に通じるわけがない」と思う人もいるかもしれません。しかし同書を読んでみると、食事や睡眠、運動、そしてマインドにいたるまで、今の私たちにもそのまま通用することが多くて驚かされるのではないでしょうか。これには、貝原益軒が生きたのが産業や文化が発展し、暮らしが豊かになった時代だったことと関係があるようです。

「食べる目的がそれまでの『生きること』から『楽しむこと』に変化し、栄養不足ではなく栄養過多を原因とする病気に注目が集まっていた。飽食の時代といわれて久しく、生活習慣病やメタボリック症候群が蔓延する現代と重なる」(同書より)

 では、具体的にどのような教えが書かれているのか、少し見てみましょう。

「養生とは体を甘やかすことではなく、心を沈め、体を動かすことである」
「ご飯は2、3口、おかずは1、2口残せば健康を損なわずに済む。酒もそうだ。少し我慢して、深酔いしないようにすれば害がない」
「高齢になったら、やることを減らしていくとよい。手を広げ過ぎてはならぬ。趣味も多いと疲れて、楽しめなくなってしまう」
「金に余裕がなくても、生命力を育むことはできる。一人静かに毎日を送り、古典に親しみ、香を焚き、山や川、月や花の美しさを愛で、四季の移り変わりを楽しみ、酒はほろ酔い加減に飲み、庭で作った旬の野菜を食べる」(同書より)

 読んでいて、自分と重ね合わせてギクリとしてしまった人もいるかもしれません。全7章からなる同書には、全部で163にわたるこうした教えを収録。短いものなら数行、長いものでも1ページなので読みやすく、すっと頭に入ってきます。「養生訓」をもとにした書籍は他にもありますが、医師である奥田さんが現代医学の観点からみて正しい項目のみ採用している点、重要な箇所には奥田さんによる注釈が記されている点も同書の良いところだと言えます。

 生活習慣を見直したり、健康意識を高めたりするのにまさにうってつけの一冊。この一年の振り返りと新たな年の目標設定を兼ねて、読んでみるのはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]