「あまり緊張もしていないですね。競技の場所にも、『自分が楽しめる』っていうものが見つかればいいなって思います」
宇野が「楽しい」と思えることは、どんなことなのか。そして、なぜ「楽しい」を求めているのか。続けて言った。
「僕が結果っていうものを前よりも重視しなくなったからこそ、結果の良さ悪さで『楽しみ』を見いだせるかっていうのは、ちょっと考えにくい」
「けど、試合の中で『楽しい』っていう部分があれば、今後もそれを求めて練習をできたり、競技に向き合っていけるんじゃないかなとは思うので」
「何か『楽しいな』って思う瞬間があればいいなとは思います」
競技会へのモチベーションは、完全には上がりきっていないように感じられた。練習では、フリップの回転がたびたび抜ける場面も見られた。
ショーを重視し、いつもより調整期間が短い中で迎えた初戦。ただ10日、宇野は周囲のそんな不安を一蹴するかのように、圧巻の演技を見せる。
SPで今季世界最高
冒頭の4回転フリップ。完璧に着氷し、3.46の出来栄え点を引き出した。この日、直前の練習でリンクの氷の特徴を正確につかんでいたという。
「跳べない原因を、もうひたすら探しましたね。6分間(練習)で『結構(スケート靴の)右足が内側に倒れるんだな』って気づいたので、本番は一か八かで対応したジャンプを」
スケート靴も微修正し、成功につなげた。
「日本でもやっているので、まあこれができるかどうかは本番の運だったんですけど」
続く4回転−3回転の連続トーループ、後半のトリプルアクセル(3回転半)も鮮やかに決め、SP今季世界最高の105.25点をたたき出した。
ただ、宇野は表情を少しも緩めることはなかった。