手紙をくれたのは、通っていた私立小学校の日本語補習クラスの先生だった。
先生に勧められて上智大学に出向くと、ディスレクシアの研究者で言語聴覚士の原恵子准教授(当時)がいくつものテストを用意して待っていた。
知能検査の結果、知的な発達の遅れはないことがわかった。一方で能力の凸凹が大きく、言語能力は高いが、情報処理能力のスコアは低かった。
読み書きの検査では、2年生レベルの漢字は読むことはできたが、書けなかった。習ったばかりの3年生レベルの漢字は、読むことすら難しかった。
文字や単語をどれぐらい正確に読めるか、流暢に読めるかを調べる検査もスコアが低かった。
「たまご」という言葉を聞いて、逆さまに言ったり、「たまご」から「た」を抜いて言ったりする、などの課題でも苦戦した。
「ディスレクシアの可能性が高いです」
原さんは、母親にそう告げた。