美味しさでは、プライベートブランドや冷凍食品を強化し、新発売したスイーツの「バスチー」は3日間で100万個を超えて売れた。優しさでは、栄養成分の表示を分かりやすくし、減塩や低糖質などを強調。地球環境保全では、プラスチックの使用量を減らし、売り切りによる食品ロスの削減を進めた。コロナ禍防止に客との密な接触を避けるため、全店にセルフレジを入れた。これらの策で、ローソンの売上高は3.40%増に踏みとどまる。
2020年度こそローソンもマイナス成長になったが、2021年度は4.04%、2022年度は5.00%と高めの成長を達成。「生活応援」や「地域密着」などが、原動力のキーワードだった。
竹増貞信さんがビジネスパーソンとして『源流』に挙げるのは、やはり水野校長の言葉だ。
スーツケース内の父の欧米土産はチョコレートだった
1969年8月、池田市に生まれる。父は繊維の輸出を手がける商社を経営し、スーツケースに商品のサンプルを詰めて欧米へ出張し、帰りはスーツケースに土産を入れてきた。開けるとチョコレートが入っていて、「海外の香り」がした。
父母と兄2人、妹の6人家族で、兄たちが自宅から歩いて10分弱の大教大付属池田小へいっていたので、自分も受験した。入学すると、市立小学校のグラウンドでやっていた少年サッカー団にいた同級生に「1人足りないからこないか」と誘われ、卒業するまで週末に通った。
水野校長が赴任してきたのは1年生の途中で、卒業後は会っていない。あの言葉は、同級生との会合で話題には出ないが、間違いなく卒業生は全員が覚えている、と思う。
大教大付属池田中学校でもサッカー部にいたが、大教大付属高校池田校舎ではラグビー部へ入った。高校ラグビー部が舞台のテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」に刺激されたためで、10番のスタンドオフを務める。大阪大学経済学部では、体育会のゴルフ部で過ごした。
93年4月に三菱商事へ入社、食料グループ畜産部の牛肉担当チームへ配属される。2年前に牛肉の輸入自由化が始まり、会社は豪州で肉牛の牧場や加工場へ投資し、牛肉をコンテナ船に乗せて輸入して、スーパーや加工業者などへ売っていた。
ただ、円高による輸入物価の低下という追い風もあって参入者が増え、値引きの乱戦となって赤字になった。96年、会社は豪州での肉牛飼育から撤退を決めて、上司に「肉をスーパーや外食チェーンへ卸すグループ企業へ出向し、残った在庫を売りさばいてくれ」と言われて驚いた。入社の同期生に留学や海外勤務が出ていたのに、早々と出向。「何かやったのか」と噂され、気持ちの整理がつかぬまま、本社を離れる。