
開催中の展覧会「モネ 連作の情景」にちなんで、クロード・モネの足跡を辿りフランス取材にも行った芳根京子さん。現地での体験を語った。AERA 2023年11月20日号より。
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――テレビ番組の取材のため、フランスの美術館やモネゆかりの地を多く訪れた芳根京子さん。なかでも、「睡蓮の間」で知られるオランジュリー美術館では、忘れ難い時間を過ごしたという。
芳根京子(以下、芳根):美術館に入ってすぐの場所に「睡蓮の間」があるとは想像もしていなくて。あまり構えずに入ったこともあり、圧倒されたことを覚えています。
「睡蓮の間」は2部屋続きですが、不思議と「温度が違う」「空気が違う」と感じました。なぜそんなふうに感じたのだろう、と改めて考えると「視覚だけでなく、五感で楽しむ絵なんだ」という考えに辿り着きました。目で観て楽しむだけでなく、その時の空気、そして匂いまでも想像できる。ある種「体験型」とも言えるかもしれませんね。
私は取材で訪れたこともあり、休館日に特別に鑑賞したのですが、「睡蓮の間」の一つの部屋に入ったときは「ちょっと受け止められないな」という不思議な感覚がありました。決してネガティブな感覚ではなく、「放たれるエネルギーが大きすぎて、一人では受け止められない」というか。
分析が正しいかはわかりませんが、絵から放たれるエネルギーって、人が多ければ多いほど分散される気がするんです。私は少人数で鑑賞したこともあり、「受け止め切れない」という感覚に陥ったのかもしれません。その場にどれくらい滞在したのかも正確には覚えていません。時間の感覚さえ失われていく、不思議な体験でした。

諦めずに続けること
――フランスでは、「アート」との向き合い方についても発見が多かったという。
芳根:フランスには街の至るところに美術館があり、そうした環境も「アート」に対するハードルを低くしているな、と感じました。そんな街とアートの関係を目の当たりにしたことで、自分のなかのハードルも下がりました。日本で美術館に行こうとすると、どこか肩ひじを張ってしまうこともあるけれど、フランスでの体験を経て、もっと気楽に色々な美術館に行ってみたいと思うようになりました。