第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、
「所得減税まで踏み込んだのは思い切った印象。一定の物価上昇の負担軽減効果はある」
と評価するが、
「採点するなら60点。目的達成のためにはもっと良い方法があった」
との見方を示す。
例えば、現在の消費者物価指数のインフレ率は3%程度の伸びだが、そのうちの2ポイント程度は食料品の値上げだといい、家計の負担を軽減することを最優先するならば、最も効果的な施策は食品類の消費税率を下げることだという。
「ピンポイントで食料品の消費税を下げるほうが経済合理性が高いでしょう。所得減税より消費減税のほうが経済効果も高く、GDPの押し上げ効果もより期待できます」(永濱さん)
岸田首相は11月1日の予算委員会でも「消費税は社会保障のための財源」として消費減税は考えていないとの考えを繰り返し述べていた。
この点について永濱さんはこう指摘する。
「消費税は社会保障財源として結びついているため減税できないという意見もありますが、消費税収のうち5兆円程度は政府債務の返済に回っていますので、この部分を時限措置で使えばいい。食料品の消費税率は8%の軽減税率が適応されていますが、これを0%に引き下げて失われる税収は4兆円程度です。社会保障財政に対する影響が少なく減税することができます」
記者会見後、X(旧ツイッター)のトレンドを見ると、「増税メガネ」といった言葉が入っていた。今回の減税策はイメージ払拭の効果がなかったのだろうか。
永濱さんの見立てはこうだ。
「一時的に減税をしても、賃金の上昇率が物価上昇率を上回るような状況が続けば、やはり増税するのではないかという不安が国民の心理に付きまとうでしょう。イメージ払拭を優先するのであれば、『防衛増税を撤回』とか、『自分の政権のあいだは消費税率を上げない』など打ち出したほうが有効だったと思います」
国民が経済対策の効果を実感できるのは来年6月。それまで岸田政権は存続しているのだろうか。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)