2007年の春の園遊会で、三笠山におそろいの皇太子さま(当時)、秋篠宮さまと紀子さまら。どの男性もシルクハットを手に持っている=2007年4月、東京都

 東京・元赤坂の赤坂御苑で11月2日、天皇、皇后両陛下主催の秋の園遊会が催された。紅葉が色づく庭園に宮内庁楽部による雅楽が流れ、女性皇族の華やかな装いも美しい。天皇陛下と男性皇族は、日中で最も格式の高い正礼装であるモーニングを着用している。しかし、あらためて見てみると、モーニングとセットであるはずのシルクハットがない。昭和天皇上皇さまはもちろん、天皇陛下もお似合いだったシルクハットはどこへ――。

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 三笠山と呼ばれる芝生の丘の上から、天皇、皇后両陛下と皇族方がゆっくりと歩いてくる。

 青く澄んだ秋空が広がる赤坂御苑で、秋の園遊会が開催された。例年より規模は縮小されたものの、漫才師の西川きよしさんなど1300人集まり、天皇、皇后両陛下や皇族方との懇談を楽しんだ。

 雅子さまは優しい黄色のスーツに身を包み、華やかな女性皇族の装いは赤坂御苑の紅葉と調和している。
 

 園遊会は明治時代、国際親善のために秋は菊の鑑賞会、春は観桜会を開いたのが前身だとされている。

 明治期の西洋化の波に乗り、宮中の儀式には洋装が取り入れられた。日中の宮中行事や天皇陵への参拝などでは、天皇や男性皇族は正礼装であるモーニング、女性皇族はローブモンタントを着用する。

 しかし、野外で行われる園遊会では、招待者の接遇があり、赤坂御苑内を歩くことから、女性皇族の洋装はドレスではなく、スーツやセットアップの服装。駐日大使など外国人の招待者をもてなす意味も込めて、春は和装を着ることが多くなった。

 一方で、天皇陛下と男性皇族はモーニング姿。しかし、実際は10年ほど前から、モーニングとセットであるはずのシルクハットが姿を消していたのだ。
 

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「最後」のシルクハットは