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もっと頑張んなきゃな
――そう話したあと、「裏を返せば、負けず嫌いじゃなくなってしまったということかもしれません」と付け加えた。だが、そこにネガティブさはにじまない。
神尾:チームの状況を見て自分の役割をまっとうするというところは、芸能界もサッカーも似ているような気がします。演じるときも、ちっちゃい役ならちっちゃい役で、それも役割の一つ。どんな役であっても、精いっぱいやり切ることを大切にしています。
自分がどう演じたいかというよりは、「この作品は面白いんだよ」ということをただ伝えられればいいなと思っているんです。どうすれば作品の魅力が届くのか考えながら演じています。
――役をまっとうすることはもちろん、共演者からの刺激も糧になっている。
神尾:皆さんやっぱり先輩なので、そこから一つでも何かを学べたらいいなと思っています。たとえば、松下さんは普段お話ししているときはとても穏やかな方なんです。でも、芝居をしているときに内側にある熱を感じる瞬間があって。そうした部分を知れたことは僕にとってすごく大きな経験で、「もっと頑張んなきゃな」という気持ちになりました。
――現在24歳。役者としても、決して短くはないキャリアに差し掛かってきた。自分自身のことを振り返るタイミングはあったのだろうか。
神尾:去年、舞台が終わってからドラマを少し休む期間がありました。そのとき、これまでのことを少し振り返ったりはしていましたね。1年前の作品をちらっと見ただけでも、やっぱり全然違うんです。「たった1年でもこんだけ変わるんだ」って驚きました。だけど、当時の作品は当時の自分にしかできなかっただろうな、と思ったりもします。
変わらない自分の本質
芸能界に入って8年目なんですけど、あっという間だった気がします。当時と今とを比べても、自分の本質は変わっていません。でも、仕事に対する向き合い方や責任感はまったく違います。最初は高校生活の思い出作りというか、軽い感じで芸能界に入ったんです。それが、一つひとつ作品を重ねるなかで、「この場所でもっと頑張りたい」という思いが募っていきました。
もちろん大変なこともめちゃめちゃありますよ。朝も早いし、しんどいと思うこともあります。でも、役を演じること自体はすごく面白いし、やりがいも感じています。
今は、憧れの役者像とか、目標はそんなに立てないようにしています。「こんな役者になりたいから、そのためにこれを頑張る」というのではなく、いただいた役を一つひとつ丁寧に演じていく。それを重ねた先の自分がどうなっているのかが楽しみなんです。
(構成/編集部・福井しほ)
※AERA 2023年11月6日号より抜粋
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