内閣人事局の担当者はこう話す。

「一般職の給与が上がったから特別職も上げないといけないという法律はありません。ただ、これまでも一般職の給与改定にあわせて特別職も上げてきました。全体的なバランスをとっての対応です」

 専門家はどう見るか。元経産官僚で慶応大の岸博幸教授は「非常に情けない話。政治側で止めるべき話でしょう」という。

細部に岸田政権の本質が出ている

 今回の法案は内閣人事局が作ったものだが、自民党や公明党に説明をして了承を得るほか、閣議決定を経たうえで国会に提出される。政治家の判断で法案を修正する機会は十分にあるわけだ。岸教授がこう指摘する。

「役人が機械的に法案を出してきたとしても、それをどうするのか判断するのが政治家の役割です。自衛官らの給与を上げるのは必要だとしても、首相や大臣も上げる必要はないでしょう。国民の賃金が十分に上がっていないなかで自分たちが賃上げしたら国民にどう映るか考えていない。今回の賃上げも微々たるものという認識なのかもしれません。国民に目を向けていないことの表れでしょう。こういう細かいところに岸田政権の本質が出ていると見ています」

 それでは岸田首相はどこを見ていたのか。元国会議員秘書で政治評論家の尾藤克之さんはこう見る。

「特別職で多いのは防衛省職員、自衛官などです。ウクライナや中東で戦争が起こり国際情勢が厳しくなっているほか、中国の軍事力増強や北朝鮮のミサイル発射などがあり、自衛隊の役割は高まっています。そんな中で『自分たちは配慮している』という姿勢を見せる狙いがあるのでしょう。言い換えれば、利益誘導、選挙対策でもあります。こうした法案でもごり押しできるという余裕が岸田首相としてはまだあるのだと思います」

 国会での審議はこれからだ。果たして法案が修正されることはあるのか。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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