※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 アトピー性皮膚炎では軽症のまま、やがて自然に症状がよくなる人も多い中、改善が見られず、悩み続けている患者も少なくありません。よくならない理由は何なのでしょうか。効果的な治療法は? 専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「アトピー性皮膚炎」全3回の1回目です。

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「湿疹がかゆくてたまらず、気づくと、ひっかいた傷痕があちこちにできている」「シーツが血だらけになっていて、家族に嫌な顔をされる」「湿疹で赤くなった顔を他人から見られている気がする」「子どもが、からだをかきむしっているのをやめさせるのが大変で、イライラしてしまう」……。

 アトピー性皮膚炎に悩む患者の訴えです。

 アトピー性皮膚炎については1990年代後半、治療の大きな柱となるステロイド外用薬の副作用に対する誤解が広がりました。このため、科学的根拠に基づいた医師の治療指針である、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」が作成され、治療のゴールとなる「かゆみのないツルツルの肌」を実現する方法が明記されています。にもかかわらずこのような患者の訴えが減らないのは、なぜでしょうか。

ステロイド外用薬を正しく塗ることの難しさ

 アトピー性皮膚炎の専門医たちが口をそろえて言うのは、「ステロイド外用薬を正しく塗ることの難しさ」です。

 子どものアトピー性皮膚炎を専門に診療している国立成育医療研究センターアレルギーセンター長の大矢幸弘医師はこう話します。

「アトピー性皮膚炎は治りにくい患者さんが存在しますが、そのような人もガイドラインに沿った治療で必ず改善します。ただ、重症の人は全身に湿疹が出ているため、ステロイド外用薬を患部にまんべんなく塗るのは大変です。結果、ちょっとよくなると薬をやめてしまう人が多いのです。しかし、治りきらないうちに薬をやめてしまうと、心理的ストレスなどをきっかけに一気に症状が悪化します。これがこの病気のやっかいなところです」

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主な原因は「皮膚の乾燥」と「アトピー素因(アレルギー体質)」