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新Jシリーズはカメラらしく使えるオトナ向け

 1型の撮像素子(CXフォーマット)を採用するニコン1シリーズの最新機種として、ニコン1 J5(以下J5)が発売された。これまでのJシリーズはミニマル系のシンプルな外観で、お堅い印象のあるニコンとしては斬新なデザインも多く、決して悪くないと感じていたのだが、J5では一転してオーソドックスな「昔ながらの」カメラデザインに回帰した。デザイン変更は、やや残念だが、多くの人にはオーソドックスなカメラらしい外観のほうがウケはいいということなのだろう。これまではフラットなすっきりしたデザインのボディーだったが、しっかりとしたフロントグリップが備わったことも注目点だ。
 機能面では撮像素子がニコン1シリーズとして初の裏面照射型CMOSになった。入射してくる光が配線層に邪魔されない構造のため受光効率がよく、高感度性能を向上しやすいというメリットがある。最高感度はニコン1 J4と同じISO1万2800だが、画像処理エンジンがEXPEED 4Aから最新の5Aになったことと併せ、画質面での向上が期待できる。
 有効画素数は2081万画素。歴代Jシリーズの画素数は、J1/J2が有効1015万画素、J3は有効1425万画素、J4が有効1839万画素だから、モデルチェンジごとに順調に画素数を伸ばしてきたことになる。



ISO6400で撮影したが、1型撮像素子搭載機とは思えないほど画質は良好。裏面照射型CMOSを採用した効果は十分に感じられる●1 NIKKOR 18.5mm f/1.8・プログラム(絞りf3.2・50分の1秒)・ISO6400・AWB・JPEG
ISO6400で撮影したが、1型撮像素子搭載機とは思えないほど画質は良好。裏面照射型CMOSを採用した効果は十分に感じられる●1 NIKKOR 18.5mm f/1.8・プログラム(絞りf3.2・50分の1秒)・ISO6400・AWB・JPEG


 もう一つの大きな進化は、ニコンのレンズ交換式カメラとして初めて4K(3840×2160ピクセル)動画に対応したこと。4K動画時のフレームレートは15pなので滑らかさには欠けるが、今後の展開を考えると興味深いものがある。パナソニックのように静止画前提の4K動画のモードなどは搭載されていないが、無償提供される純正ソフトViewNX-iを使えば、4K動画から静止画を切り出すことも可能だ。もちろんフルHDであれば、60pの動画撮影に対応している。

 このほかにJ4からの進化点としては、インターバルタイマー撮影やタイムラプス動画の搭載、そして動画時にもアクティブD-ライティングを使用可能になったこと、被写界深度などの知識がなくても描写を調整できるライブコントロール機能の搭載などなど。デジタル的に画像エフェクトを行うクリエイティブモードに、ノスタルジックセピアほか6種類のエフェクトが新たに加わったことも、このクラスのカメラとしては意義がある。
 AFや連写性能などはJ4から変わりないが、AF連動なしなら約60コマ/秒、AF追従ありでも約20コマ/秒というハイエンドモデルも真っ青になるほどの連写性能に不足はない。小型・軽量なお気軽カメラを装いながら、その気になれば最上位のD4Sにも勝るスポーツ撮影の可能性を秘めているのは痛快だ。


液晶モニターは2軸のチルト式で、上方向だけでなく、下方向へも可動。表示面はほぼ180度反転可能で、自分撮りにも対応する
液晶モニターは2軸のチルト式で、上方向だけでなく、下方向へも可動。表示面はほぼ180度反転可能で、自分撮りにも対応する

ニコン1Jシリーズとしては初めてコマンドダイヤルを装備し、操作性が向上した。コマンドダイヤル中央には動画撮影ボタンがある。また、モードダイヤルから直接露出モードのPSAMが選べるようになった
ニコン1Jシリーズとしては初めてコマンドダイヤルを装備し、操作性が向上した。コマンドダイヤル中央には動画撮影ボタンがある。また、モードダイヤルから直接露出モードのPSAMが選べるようになった

 これまでのJ4と使用感は大きく変わることはないが、Jシリーズとしては初のコマンドダイヤルの採用により、各種パラメーターのセットが素早く行えるようになっているのは好印象。
 1型撮像素子ならではのコンパクトデジタルカメラ並みの小ささでありながら、機能的には相当にハイレベルな仕様で、エントリー層だけでなく、ベテランのサブカメラにも最適だ。



単焦点18.5mmF1.8レンズが付属するキットを用意し、1型でも大きくボケることをアピール。もちろん、絶対的な焦点距離が短いので中距離以遠ではあまりボケないが、近距離では前景や背景を大きくボカせる●1 NIKKOR 18.5mm f/1.8・絞り優先(絞りf1.8・640分の1秒・+1.3補正)・ISO160・AWB・JPEG
単焦点18.5mmF1.8レンズが付属するキットを用意し、1型でも大きくボケることをアピール。もちろん、絶対的な焦点距離が短いので中距離以遠ではあまりボケないが、近距離では前景や背景を大きくボカせる●1 NIKKOR 18.5mm f/1.8・絞り優先(絞りf1.8・640分の1秒・+1.3補正)・ISO160・AWB・JPEG

◆河田一規


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●マウント:ニコン1マウント●露出関係:撮像素子によるTTL測光方式 。モード:【1】マルチパターン【2】中央部重点【3】スポット。露出補正:±3EV●オートフォーカス:ハイブリッドAF(位相差AFとコントラストAFの併用)。AFエリア:シングルポイント171点(中央部105点は位相差AF)、オートエリア41点●シャッター:エレクトロニックシャッター (撮像素子による露光制御)。シャッタースピード:1/1万6000~30秒。X接点:1/60秒●撮像素子:有効画素数:2081万画素 。13.2×8.8mm裏面照射型CMOS●撮像感度:オート、ISO 160~1万2800●内蔵ストロボ:オートポップアップ式。ガイドナンバー:約5(ISO100・m)●液晶モニター:3型TFT液晶、約104万ドット 、チルト式●連続撮影:約5コマ/秒、約10コマ/秒、約20コマ/秒、約30コマ/秒、約60コマ/秒●無線通信:IEEE802.11b/g●記録媒体:microSDメモリーカード(microSDHC/microSDXC対応)●大きさ・重さ:約98.3×59.7×31.5mm・約265g(バッテリーとメモリーカードを含む)
●価格:オープン。
ボディー単体で実売5万4530円。
VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOMとのセットは5万9930円。
18.5mm f/1.8とVR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOMとのセットは7万2900円。
VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOMとVR 30-110mm f/3.8-5.6 PD-ZOOMとのセットは7万9890円。