結果を待つ麗澤大学の選手ら(手前)。初出場に一歩届かなかった。今年は4年ぶりに沿道応援が解禁、結果発表エリアにも大勢の観衆が集まった(撮影/写真映像部・東川哲也)

「東京国際大はエティーリのアクシデントがなければ1分は縮められた。総合で3秒差はほぼ誤差で運の世界です。ただ、留学生の遅れをカバーしきれなかったとも言えます。麗澤大は去年に続いて選手層が課題。箱根に出るには10人いればいいのではなく、控えも含めて20人くらい走力を持った選手がいないと厳しい。上位層は互角でも、9、10番手のタイム差が大きく響くことはよくあります」

 関東勢以外では京都産業大学の27位が最高だった。

「やはり力の差はありました。上位選手のラップも15キロ以降大きく落ちていて、長い距離に慣れていない影響がはっきり出た。それでも、京都産業大などは関東学生連合チームに選手を送る準強豪に近い位置につけています。よく頑張ったと思う。全国化は今回限りですが、恒久的に全国化したほうが選手の選択肢も広がって大学駅伝が盛り上がるはずです」(金さん)

AERA 2023年10月30日号より

予選会も「夢舞台」

 一方、本戦出場をかけた戦いの陰で、予選会こそが「夢舞台」だった大学もある。箱根駅伝予選会に出場するには10人以上14人以下のエントリー選手全員が1万メートル34分0秒以内の公認記録を持っていることが必要だ。これ自体は学生ランナーにとって必ずしも難しい記録ではないが、特別な強化体制を敷いていない一般大学で10人そろえるのは並大抵ではない。

 6年ぶりの予選会出場となった千葉大学が条件を満たしたのは期限前日。9月30日の記録会で1年生3人が33分50秒前後の記録を出し、ギリギリで10人に達して滑り込んだ。記録会では3人の34分切りを絶対目標に、上級生がペースメーカーとして1年生を引っ張ったという。主将の條川(じょうかわ)武志は感慨を込めてこう話す。

「去年10月に私が長距離ブロック長に就任したとき、34分を切っていたのは1人だけでした。我ながら無謀だったと思うけれど、何とか予選会に出たいと中距離の選手も巻き込んで、1年生にも本当に頑張ってもらった。1人が34分を切るごとに部が盛り上がる雰囲気ができて、この舞台に立てました。私個人にも大学にもいい経験になりました。34分を切る選手を12人、14人と増やし、これを当たり前にしていきたいです」

 群馬大学は出場校中最長の14年のブランクを経て復帰した。長い間「あと1人」がそろわずに参加を逃してきたという。主将の植村勇太は言う。

「まずは全員完走を目標に取り組みました。こうして走ることができて、来年・再来年につなげられると思います」

 両大学とも全選手が堂々の完走。千葉大学は総合53位、群馬大学は56位の結果を残した。

 秋晴れの予選会から向かう先は新春。第100回箱根駅伝は2024年1月2日午前8時、東京・大手町をスタートする。(編集部・川口穣)

AERA 2023年10月30日号

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