東京農業大学の前田和摩は日本人トップの1時間1分42秒でゴール。ハーフマラソンU-20日本記録にあと1秒と迫る好タイムだった。主戦級4人を自由に走らせ、他選手は集団走する作戦がはまり、10年ぶりに予選を突破した(撮影/写真映像部・東川哲也)

「最速留学生」は転倒

「ここで学生たちの泣く姿を何年も、何人も見てきました。欲を言えば一桁順位でゴールしたかったけれど、最低目標は果たすことができました。選手たちはよくやった、よく頑張った。それに尽きます」(小指監督)

 12位は駿河台大学。全員で一礼した後に喜びを爆発させた。98回大会で初出場を果たした新興校が2大会ぶり2度目の切符を手にした。今回は「やや厳しい」との見方が強かったが、全員が力を発揮した。上位10人のうち6人が2年生、2人が1年生の若いチームでもある。徳本一善監督は「めちゃくちゃうれしい」と笑いつつ、続ける。

「厳しいと思われているのはわかっていたし、自分たちの分析でもよくて13番。でも1カ月前に急に空気が変わって、チームで勝負する姿勢ができてきた。選手たちが本気で挑戦して勝ち取ったんです。ただし、目標は本戦出場ではなくてシード権。今の2年生は箱根初出場を見て入ってきた子たちで、その目標に向いています。あと2カ月半、シードを取るためにどうすればいいかひたすら考えて、楽しみます。うちはまだまだおもしろいチームになりますよ」

 最後の1校、13番目に滑り込んだのは総合優勝3回を誇る山梨学院大学。一方、トップ通過候補の呼び声もあった東京国際大学はわずか3秒差の次点に泣いた。5千メートル、1万メートルで日本記録を上回るタイムを持つ「最速留学生」リチャード・エティーリが8キロ過ぎに周囲の選手と接触して転倒、右ヒザ下を打撲した。レースは続行し個人12位に入ったが、本来の走りとは程遠かった。

 主力の村松敬哲(ひろのり)は、

「(エティーリは)足が痛いなかで頑張ってくれた。転倒を聞いてペースを上げたかったが、思ったように上げられなかった」

 と唇をかんだ。

恒久的に全国化を

 悲願の初出場を目指した麗澤大学は15位。95、96回大会予選で2大会連続の次点。前回は14位で「初出場に最も近い」と期待されたが、今回もあと一歩だった。留学生のデイビッド・シュンゲヤ・ネイヤイが個人7位、日本人選手も上位層は好走したものの、後続が続けなかった。山川達也監督は言葉を詰まらせながらこう話した。

「選手たちはしっかり準備して出し切ってくれた。選手層の不安はあって、8~10番手の選手がカギとは思っていたけれど……。届きませんでしたね。かける言葉が見当たらないです」

 前出の金さんはこう振り返る。

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