千葉大学が予選会の参加条件を満たしたのは期限前日。主将の條川武志(747番)ら部員一丸となり、1年かけて参加を目指してきた(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 2024年1月2、3日に開催される箱根駅伝の予選会が行われ、出場校が出揃った。今回に限り参加枠が全国に広げられたが、地方大学の予選突破はならなかった。AERA 2023年10月30日号より。

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 大学名が読み上げられるたび、歓声とどよめきが交錯する。

 コールされた大学の選手たちは拳を突き上げ、あるいはほっとした表情を浮かべて喜びを表した。一方、呼ばれない大学の選手たちは宙を見上げ、手を握り締めて祈るように結果を待つ。

 10月14日、第100回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の予選会が、陸上自衛隊立川駐屯地スタート、昭和記念公園フィニッシュのハーフマラソン(21・0975キロ)で行われた。今回は記念大会で例年より通過校が増え、予選会から13校が本戦にコマを進める。前回優勝の駒澤大学、2位の中央大学、以下青山学院大学、國學院大学など前回10位以内のシード校を加えた23校が新春の箱根路を駆けることになる。

 今回の予選会には史上最多の57大学が参加した。前回シードを得られず予選会に回った名門、返り咲きを狙う古豪、初出場をかけた新鋭。さらに、関東の大学に限られていた参加枠が今回に限り全国に広げられ、11校の地方大学も加わった。

東農大が10年ぶり突破

 予選会は駅伝形式ではなく、各校10~12人が一斉にスタートして上位10選手の合計タイムで争われる。ボーダー付近の大学が通過できたかわかるのは結果が読み上げられるまさにその瞬間だ。

 1位、大東文化大学。2位、明治大学。帝京大学、日本体育大学、日本大学と下馬評の高かった常連校が次々に呼ばれていく。直前に不祥事で監督が解任された立教大学も6位で通過した。残る枠が少なくなるにつれ、選手たちの表情は険しさを増す。

 11位で東京農業大学がコールされた。地鳴りのような歓声。選手たちは円になって抱き合う。本戦出場69回の名門だが、ここ9年は予選を通過できず苦しんだ。この日チームを牽引したのが1年生の前田和摩だ。初のハーフマラソンながら、全体9位、日本人トップの快走を見せた。陸上解説者の金哲彦さんは前田の走りをこう絶賛する。

「序盤を冷静に抑え、15キロから20キロは留学生のトップ選手以上のスピードで通過した。堂々たる走りでした。フォームも素晴らしく、単に心肺機能で押すのではなくて大きなストライドで走っています。世界で戦う姿を想像したくなる選手です」

 ほかの選手たちも期待どおりの走りを見せた。総合タイムは10時間39分05秒。小指(こざす)徹監督の設定タイムから30秒程度の誤差だったという。

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