このうち、空気圧機器大手のSMCは600万円、センサー大手のキーエンスは500万円を上回る。3月に株式分割を実施したばかりのファーストリテイリングも、なお300万円を超える水準だ。前出の森下さんは言う。

新NISAの開始を控え、岸田文雄政権も『資産運用立国』を掲げています。特に東証が名指しした100万円を上回るような、最低投資金額の大きな企業は(株式分割を)引き続き意識せざるを得ないのでは」

 1月に始まる新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を合わせた非課税投資枠は年間で最大360万円に拡充される。現行の5年間の期限もなくなり、恒久化する。新しく投資を始めたり、長く持ちたいと考える個人の投資を呼び込む上でも投資単位の引き下げは有効だ。

「これまで株式分割の発表後に株価は上がり、実際に分割される効力発生日前後までには元の水準に戻る傾向がみられましたが、最近は株価の好調さがより長く続く特徴が見受けられます。相場全体が上昇した時期と重なったこともありそうですが、今まで何もしてこなかった企業が分割を行う例も目立ち、改めて評価する動きにつながっているかもしれません」(森下さん)

 より身近な優良銘柄が増えることを期待したい。

(AERAdot.編集部・池田正史)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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