企業は「SDGs」を掲げているのに
これまでのジャニーズ事務所の取引先企業の動きが「問題解決にどうつながるのか」と指摘するのが、企業活動と人権との関係を研究する大阪経済法科大学の菅原絵美教授だ。
「ジャニーズ事務所と関わってきた多くの企業が、経営にSDGs(持続可能な開発目標)を掲げてきました。それなのになぜ、同事務所のタレントの起用を打ち切ったり、契約を解除したりしたのか」
SDGsとジャニー喜多川氏の性加害問題がどう結びつくのかと言えば、SDGsで掲げられている17のゴールすべてに「人権の尊重」がかかわっているからだ。
2015年、SDGsを中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国連サミットで採択された。「SDGsの達成」と「人権の保護・促進」は表裏一体の関係にあるとされ、同アジェンダは企業に対し、企業活動における人権尊重のあり方に関する国際文書「ビジネスと人権に関する指導原則」の遵守を求めている。
この指導原則は、取引先企業で人権侵害を確認したときに、傍観することなく、人権侵害を是正する役割を求めている。そして、企業は策を講じたうえでその影響力を発揮できない場合のみ、取引関係を終えることを考えるべきだとしている。
「人権尊重」と言いながら
SDGsを掲げる企業であれば当然、サプライチェーンを通じた人権尊重なくして持続可能な社会が実現できないことと向き合わなければならない。そして取引先で人権侵害を確認したら、『指導原則』に基づいた対応が求められることになる。
「ところが今回、ジャニーズ事務所と取引のある企業は、いきなりタレントの起用を打ち切ったり、契約を解除したりしている。非常に残念です」(菅原教授)