ウェルパを考える上でカギになるのが、「時間の概念」だと立木さんは言う。「人々の関心の先、すなわち投資先は富から時間へシフトしていく、という仮説を立てています」
没入体験に価値がある
富裕層でなくても、グッチのバッグをレンタルで持つこともできるし、カーシェアリングだとベンツにも乗れる。こうしたサービスの登場によって、外見上の装いだけでその人の「富度」は評価されにくくなった。そんな中、コスパやタイパも包含する形で「時間の使い方」の差別化を図るウェルパの潮流が顕在化していく、と立木さんは予見する。
「時間はすべての人に平等に与えられた資源です。その時間すら忘れて没入できる体験にどれだけ費やせるか、ということに価値を見いだす流れです」
海外リゾートで過ごす1週間が悦楽という人もいれば、自宅でガンダムのプラモデル製作にまる一日没入するのが至福と感じる人もいる。この場合、リゾート地での1週間とプラモデル作りに使う1日はウェルパの尺度に照らせば等価だ。むしろ多忙な現代人には、より短時間で同等の満足感が得られるほうが価値は増す。立木さんは言う。
「そう考えれば、コンビニジムのニーズが高いのもうなずけます。物価高でかつ実質賃金の伸びが低調な日本社会において、かつての尺度での成長発展をいい意味で諦め始めている中、お金を増やすことよりもウェルパ=自分のための時間を増やすことに価値の軸が移りつつある表れとも受け取れます」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年10月9日号