ただ、インドネシアでは虫よけ製品に対する法規制への対応にかなりの時間が必要なことがわかった。検討の場をタイに移したところで、自身もタイに異動。蚊の忌避について日本で研究している自社の研究員と話し合い、準備を開始した。
タイでは現地の大学や官庁などと連携して、デング熱の感染を抑えるためのボランティアにも力を入れてきた。ボウフラを減らすための清掃活動や住民への啓発のほか、学校では蚊の生態やデング熱についての特別授業も実施。なるべく多くの人に使ってもらえるようにと、タイの保健省を通じて商品を寄贈した。
使用者からは「外で子どもと安心して遊べるようになった」といった喜びの声が寄せられることも多い。だが、商品を売るだけではデング熱の被害は食い止められない。
「蚊に刺されないことが当たり前の日常となるように自分自身で肌を守る。そういうふうにみんなの意識を変えていくことも使命です」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2023年10月9日号