元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】障害者施設で一個一個手作りされたお灸

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 網走市での講演を聞きにこられた鍼灸師さんが「お灸」セットをプレゼントして下さった。

 当コラムで我がピロリ菌感染の顛末をお読みくださり、お灸で胃を労ってほしいと、近いとは言えぬ町から車を飛ばして来て下さったという。そのようなご厚情に応えうる人間かどうか甚だ心許ないが、頂いた以上はやるべきことは一つ。帰宅してから有難く早速お灸初体験。そうなんですヨガや食養など東洋医学に興味はあれど、お灸、やったことなかったんです。だって火をつけるんですよね! 「火傷するんじゃないか」「痕が残るんじゃないか」というイメージを払拭できぬまま60年近く生きてきてしまった。

 盛大にドキドキしながら、同封の説明書にあった胃腸を労わるツボに貼り付けたモグサにそっと線香の火を移す。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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