9月に発足した岸田再改造内閣は過去最多タイの女性5人を閣僚に起用したが、副大臣と政務官計54人はすべて男性
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 第2次岸田再改造内閣には過去最多タイとなる女性5人が入閣した一方で、岸田首相が「女性ならではの感性で」と発言。副大臣・政務官54人はすべて男性だ。そんな岸田内閣にもの申す。AERA2023年10月9日号より。

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 9月13日の第2次岸田再改造内閣発足以来、気分が沈んで仕方がない。副大臣26人と政務官28人、男だけがひな壇に並ぶ映像がフラッシュバックする。「女はいらない」「女は劣っている」。そういうメッセージをどうしても感受してしまう。

「被害妄想だろ」と嘲笑する向きがあるかもしれないが、違う。ユーミンに歌ってもらうまでもなく、「すべてのことはメッセージ」。とりわけ政治の世界における人事は、為政者の最たるメッセージである。

男社会を渡る通行手形

 それがわかっているからこそ、政権浮揚を狙う岸田文雄首相は閣僚人事で、過去最多タイとなる女性5人を登用したのだろう。ところが記者会見で「女性ならではの感性や共感力」なんて言って台なし。女を「数」としてしか見ていないことが露見した。

「首相のジェンダー観ってどうよ?」。多くの人が疑問と不安と不満を抱いたようだが、残念ながら岸田氏に、観点=判断の根拠となる立場、見地という意味での「観」などない。あるのはふわっとした「感」のみ。氏の立場や見地なんて、状況次第でいくらでも変わるのだ。

 女性を増やしたら国民ウケがいい感じするよね。森、麻生両パイセンが推す女性もいるしね。でも副大臣・政務官は派閥推薦も男性ばかりだし、全員男でもいいって感じだよね──。

 問題の根が深いことは、外相に抜擢(ばってき)された上川陽子氏が自ら「女性ならではの視点を生かしていきたい」と就任会見で述べたことからもわかる。

 有能との呼び声高く、要職経験も豊富で、現職女性議員の先頭を走る彼女でさえ、そういう構えでないと永田町をサバイブできないということだろう。

「女性ならでは」は、男社会を渡り歩き、高みを目指す女性の「通行手形」として確かに使い出がある。ゆえに上川氏のように大事に握りしめている人も少なくないが、手形の裏には小さく「女のくせに」と書かれていて、男たちが「俺たちの手に余る」と判じればすぐ裏返る。思い切って自ら手形を捨て、「私ならでは」と胸を張っていかない限り、女の足には枷(かせ)がはまったままだと思うけれど──。

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