男性のような非正規の地方公務員は、総務省の調査で全国に約113万人いる。国は20年、非正規の地方公務員に賞与を出すなど待遇改善を図るとして、会計年度任用職員制度を導入した。
だが、非正規公務員の待遇改善に取り組む「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」共同代表の瀬山紀子さんは、非正規公務員が置かれた状況は「明らかに不安定になった」と指摘する。
「会計年度任用職員制度の導入以前は、単年度ごとの契約更新であっても、長期にわたり働くことができた自治体も少なくありませんでした。しかし制度がはじまり、1年ごとの雇用が全国的に厳格化されたと言え、雇用がより不安定化しました」
そして収入は「不安定なまま」(瀬山さん)。はむねっとが22年に行った調査では、回答した705件のうち、21年の就労収入が200万円未満は53%に上った。瀬山さんによれば、制度導入と同時に時給や労働時間を引き下げた自治体が多く、収入増につながっていないという。
「こうした状況下で、仕事を掛け持ちせざるを得ない非正規公務員はかなりいると思います。低収入の上、いつ切られるかわからない不安定雇用では、不安は大きく心身が疲弊し、未来も見えずにやめていく人は少なくありません」(瀬山さん)
私は「使い捨て」
西日本の高校で、美術の非正規教員として働く40代の男性も、漠然とした将来への不安と背中合わせで暮らしている。
「使い捨て公務員です」
大学で絵画を専攻し、絵を追求したいとの思いから、比較的自由が利く非正規教員として働くようになった。
給与は1コマ約2800円。一つの学校で週に平均6コマを担当する。三つの学校を掛け持ちするが、年収は合わせて200万円いくかいかないか。多い時は学習塾など三つの副業を掛け持ちしていたが、体調を壊し、いまは教育関係の副業一つに絞っている。収入は年60万~70万円ほどだという。
不安は収入だけではない。体を壊して働けなくなっても、雇用保険が適用されない。さらに、給与は授業のコマ数に応じて支給されるが、授業が終わった後の部屋の片づけや生徒の成績評価を無給でさせられるなど、理不尽なことも少なくない。そして、何より心配なのが、先のことだ。