低収入で不安定な待遇の非正規公務員。生活のために副業せざるを得ず、心身ともに限界を迎えているという。非正規公務員の実情に迫った。AERA 2023年10月2日号より。
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副業によって追い詰められていく人は少なくない。
いつまでこんな仕事をつづけなければいけないのか──。
福岡県の地方都市。40代の男性は、深夜のパン工場で副業をしながらそう思う。
本業は、県内の高齢者施設で介護の仕事をしている非正規公務員。25年ほど前に国立大学の大学院を修了した。研究職に就きたかったが、折しも就職氷河期。正社員への道はなく、主に非正規公務員として雇い止めを繰り返しながら働いた。高齢者施設は昨年10月から、県から派遣される形で働いている。時給は950円で、週5日フルタイムで働き、収入は手取りで月11万円程度。
ギリギリの暮らしのなか、さらに状況が悪化する出来事が起きた。昨年、同居する70代の母親が転んで骨折し、リハビリのため特別養護老人ホームに入所することになったのだ。入居費は月7万円。とても、本業の収入だけでは賄えない。
今年になって始めたのが、近所のパン工場での副業だった。主に夜勤で、月5日から10日働く。時給は県の最低賃金の900円で、月5万~8万円の収入がある。こうして何とか生活できているが、疲労が蓄積しひざを痛めたという。
しかも、介護は全くの未経験。入居者のおむつ替えや入浴など慣れない仕事に手間取っていると、年下の正規職員から「使い物にならないので、やめてくれ」とパワハラも受ける。
「身体も心も限界です」
何とか正社員の仕事に就きたい男性は、就職氷河期世代を対象とした公務員の正規職員の採用試験を受けている。昨年は最終面接までいったが、不合格だった。今年も10月に挑戦する予定だ。男性は言う。
「私のような就職氷河期世代は『負け組』といわれます。再チャレンジできるようなシステムをつくっていただきたい」