――国や自治体の財政事情を考えると税収をもっと増やしたいと思うようになると感じます。二重課税が指摘されるケースはこれから増えていきませんか。

 政治の場で議論を尽くすべきでしょう。前述した熱海市は、宿泊税の導入がうまく進んでいません。消費者だけでなく、宿泊業界にも慎重な意見が多いためです。宿泊税を導入すれば神奈川県箱根町など、競合する周辺の温泉地に客が流れてしまう恐れがあります。新税を導入しても、必ずしも税収が上がるとは限らない。簡単な話ではないのです。

 ガソリン税も、もともと、消費税を導入する際にしっかりと議論するべきだったという指摘があります。ちなみに、なぜか軽油とは異なる仕組みになっています。軽油の場合は、ガソリンの場合のガソリン税にあたる軽油引取税を課す前の軽油価格に消費税と軽油引取税を課す方法です。ガソリン税と違って、軽油引取税に消費税をかけるようなことはないのです。その理由として、軽油の場合、軽油引取税の直接の負担者は事業者側ではなく、消費者だからと言います。なぜガソリンと軽油で考えが異なるのか説明を見たことはありません。

 消費税の税率はすでに10%に達し、これからも引き上げる必要があると言われています。税率が上がれば、二重課税への批判は蒸し返されるでしょう。物品に関する課税のあり方全体をもう一度考え直すべきではないでしょうか。

(AERAdot.編集部・池田正史)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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