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 ガソリン価格の高騰が続き、消費者の目が向けられているのが「二重課税」の問題だ。ガソリンは、本体価格だけでなく、ガソリン税に消費税がさらに課せられる仕組みだ。そのため家計の負担をより重くしているように映る。消費者政策や関連の法制度に詳しい日本女子大の細川幸一教授は「モノにかかる課税のあり方全体を見直すべきだ」と訴える。

【写真】燃料価格対策の記者会見を行う岸田首相

 ――二重課税の問題はなぜ生じてしまうのでしょうか。

 まず前提として、二重課税という言葉に法的な定義があるわけではありません。はっきりとした定義がないため、同じ二重課税と言っても、税金を課す国や自治体の側と、税金を納める消費者の側の言い分には食い違いが生じます。

 かりに消費者の側から二重課税のように見える現実があったとしても、課税する側は「二重課税ではない」と言うかもしれません。

――ガソリン税と消費税のケースについて国はどんな見解を示しているのですか。

 「納税義務者が異なるから二重課税ではない」と説明しています。ガソリン税は、消費者のもとに商品であるガソリンを届けるまでに、事業者側が払っている。一方で、消費税は、消費者が商品の購入時に負担する。だから違法な二重課税にはあたらないという理屈です。酒税やたばこ税に関しても同じです。

 そう言われると、ほかにいくらでも例はあります。新聞を例として考えてみましょう。新聞を発行する新聞社は、社屋にかかる固定資産税や法人税をはじめ、いろいろな税金を払っています。新聞の価格は、こうした税金を含めた生産コストを考慮して決まります。そして購読者は、この価格にかかる消費税を払っています。

 理屈の上では、新聞も二重課税ということになり得ます。それでも新聞にかかる消費税は、ガソリンや酒、たばこと違って二重課税という批判は出てきません。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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「課税標準が違うから二重課税ではない」