――なぜですか。
ガソリン税や酒税、たばこ税は税率が高いからです。特に今は物価が上がり、目立ちやすい。とりわけ、ガソリンそのものの値上がり幅は大きく、同じ税率でも消費税の額は膨らみます。
また、課税側は「課税標準が違うから二重課税ではない」という説明を使う場合があります。課税標準とは、課税の際に基準となるもののことです。
静岡県熱海市が国内で唯一、導入している別荘税(別荘等所有税)について、市はこの説明を用いています。別荘税は、住民登録がないのに市内に不動産を持つ所有者等に対して課すものです。不動産を持つ人には、すでに固定資産税が課されています。ですから、二重課税という指摘があります。
これに対し、市は、固定資産税は家屋の評価額を、別荘税は家屋の床面積をそれぞれ課税標準として課税しているから、二重課税にはあたらないという見解を示しています。
――わかりにくいですね。
この理屈だと、いくらでも税金を課すことができてしまいます。今度は「建物の高さ」を課税標準としたら、また別の税金を課すことができるわけです。英国にはかつて「窓の数」に応じて税金を課す制度がありました。まったくあり得ない話ではなくなってしまう理屈です。
熱海市はさらに観光分野で宿泊税の導入を目指しています。市はこれまでに、ほかの温泉地と同じように入湯税を徴収してきました。入湯税は市内の温泉に入る客に課すものです。宿泊税は、市内の宿泊施設に泊まる客にかかる。
熱海の旅館に泊まる人は、温泉が目当てであることが多いでしょう。温泉に入る人はすでに入湯税を払っているわけです。ですから宿泊税の導入は二重課税になるという批判が出ています。
市の側は、課税対象が異なるから二重課税ではないと説明しています。宿泊税は宿泊行為、入湯税は入湯行為に対して課税しているという理屈です。