父のそうした決め事が「高校時代はすごく嫌」(悠生さん)だったが、「この年でも親が好きだと思えるのは、こういう思い出があるからかなと感謝」(慶人さん)もしている。
現在、慶人さんは岐阜市の朝日大学病院で研修医を務める。将来何科を選択するか、まだ可能性を探る日々だ。しかし患者さんと向き合う中で、この道を選んだことの確かな手応えを感じ始めている。悠生さんは岐阜大学医学部の3年生。臨床の授業が始まって、改めて医学部で学ぶ面白さに目覚めてきた。今、夢に向かって邁進する息子たちに孝洋さん・恵美さん夫妻が望むことはただ一つ。
「この先、どのような立場に立ったとしても、人様のお役に立ちたいという志だけはいつまでも忘れないでほしい。それだけですね」

(取材・文/志賀佳織)
※週刊朝日ムック『医学部に入る2024』より

