「うんこ」だ「チンコ」だのという下らなさと、ビートたけしの流れを汲んだスピードと語感、とんねるずが示し続けていた「テレビ人としての不適合感」、そしてダウンタウンやウッチャンナンチャンらが作った新しい時代の漫才やコントの要素も備えた、「極私的お笑い歴史」の集合体が、私にとっての爆笑問題でした。
 

 彼らを観て、私が初めて気づいたのは、「テレビにフィットしない人がテレビの中に存在する重要性」です。

 太田光・田中裕二両氏から醸し出される正義、差別、真摯さ、頑固さ、思いやり、反骨心、拗らせ、エロ、ナンセンス、インテリジェンスは、初めて彼らを観た日から一貫して変わっていません。彼らが社会人として保とうとするバランス感覚は、往々にしてテレビの予定調和や様式美から見事に逸脱します。その様が、ここへ来てさらに愛おしくてならないのです。

 今後ますます妥協と安心の産物になっていくのがテレビなのだとしたら、爆笑問題の有り様というのは、いよいよもってその「真逆」なものになる気がしてなりません。そして私は、そんな彼らを観たり、一緒に仕事をさせて貰えたりするのが楽しみで仕方ない。

 どこぞの雑誌か何かが「爆笑問題の地上波レギュラー番組がついにサンジャポだけに!」などとサゲ記事を書いていましたが、裏を返せばまさに今こそ爆笑問題真骨頂の時代の到来だということにどうして気が付けないのか。

 徹子さんや談志さんやたけしさんもそうですが、「滑舌の鈍くなった太田光の話を字幕なしで理解できる」ことは、その時代を一緒に生きた世代の悦びです。
 

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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