2021年の司法統計によると、相続トラブルがもっとも多いのは、相続財産が5000万円以下のケース。相続財産は現金・預金だけではなく、分割が難しい土地や建物も含まれる。都市の持ち家を相続したら、該当することが多い金額だ。少額であっても、遺言書の内容に納得いかず、それまで仲が良かった家族が争うケースは珍しくないという。
累計115万部突破の「超基本」シリーズ最新刊で、相続専門の税理士法人「ベンチャーサポート相続税理士法人」の古尾谷裕昭代表税理士が監修した『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない 相続・贈与の超基本』は、遺産分割や節税で損をしないための基礎知識を網羅し、2024年1月1日に施行される相続税・贈与税の税制改正にも対応。不公平な遺言書への対策についても、事例を用いてわかりやすく解説している。
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3人きょうだいの次男だという男性は、亡くなった父の遺言書を見て驚いた。「長男に全財産を譲る」と書かれていたからだ。長女と自分への遺産分割についてはまったく触れられていなかった。長女もこの内容に納得がいかず、2人は異議を申し立てができるのか、税理士事務所を訪ねた。
被相続人(この場合は父)が遺言書を残していた場合、原則としてその内容に従って遺産相続が行われる。ただし遺言書は絶対ではない。遺言書の内容に納得できない場合は、以下の対策を講じることができる。
① 遺言書の無効を主張する
故人が一人で遺言書を作成し自分で保管していた場合には、公証人と一緒に作成し公証役場で保管していた場合とは異なり、無効になることもある。被相続人本人が認知症の状態で作成したものや、作成日付がないなど法的要件を満たしていないものは、地方裁判所に無効確認を申し立て、無効が確認でき次第、相続人全員で遺産分割協議を行う。