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フルサイズEマウント用高倍率ズーム

 広角24mmからの10倍ズームレンズだが、望遠側が240mmというのは思いのほか具合がよい。210mmの「もう少し望遠で寄りたい」という欲求がうまく和らぐ。210mmから、望遠にしていくというよりも、実は「そこまで望遠にしなくてもよい」という確認ができ、余裕が生まれ、結果的に150mm前後の使用が増えるという妙な感じになった。言うなれば「懐に余裕があるほうが無駄な買い物をしない」感じに近い。

 背景には、10倍ズームという高倍率ながら、どの焦点域でも描写の雰囲気がほぼ安定していて、「ここが使いどころだ」というポイントが特にないということもある。

 今回、カメラボディーはα7IIを使用。倍率色収差の補正はオンにしたが、絞り開放の周辺の落ち具合はよい味が出るので周辺光量の補正はオフ。歪曲の補正には未対応のようだが、「10倍ズームとしては」という枕詞なしに、歪曲は少なく、また質的な素直さがある。最短撮影距離は、0.5~0.8mということで、食べ物のメモスナップ的な用途には不満も出るだろうが、それ以外の一般的な用途なら常用レンズとして十分な満足度が得られる。





240mmで80cmまで寄れるので花などの撮影にも活用できる●240mm時・α7II・絞り優先AE(絞りf8・250分の1秒)・ISO160・AWB・JPEG
240mmで80cmまで寄れるので花などの撮影にも活用できる●240mm時・α7II・絞り優先AE(絞りf8・250分の1秒)・ISO160・AWB・JPEG





広角端での最短撮影距離で絞り開放。地面に落ちた椿の花もパサついた感じにならずいい感じに描写されている●24mm時・α7II・絞り優先AE(絞りf3.5・1250分の1秒)・ISO100・AWB・JPEG
広角端での最短撮影距離で絞り開放。地面に落ちた椿の花もパサついた感じにならずいい感じに描写されている●24mm時・α7II・絞り優先AE(絞りf3.5・1250分の1秒)・ISO100・AWB・JPEG




デザイン
仕上げの質感も含めて、ツァイスのレンズを思わせるデザインで防塵・防滴。マウント径に対して鏡筒は太めだが、マウント部へかけてのバランスがよいので、装着状態ではほとんど気にならない


使用感・操作感
リングの操作が適度にしっとり重いので、10倍というズーム比ながら微妙なズーム操作ができる。MF時のフォーカス操作も同様。光学式の手ブレ補正搭載だが、効果は十分


描写性
無機的に切り込む繊細、有機的に描画する繊細という評価軸があるならば、やや後者寄り。その印象は、絞りや焦点域によってほとんど変わらない。安心して使えるレンズ

◆まつうらやすし


* * *
●焦点距離・F値:24~240mmF3.5~6.3●レンズ構成:12群17枚(非球面レンズ5枚、EDガラス1枚)●最短撮影距離:0.5~0.8m●最大撮影倍率:0.27倍●画角:84°~10°●フィルター径:Φ72mm●大きさ・重さ:約Φ80.5×118.5mm・約780g●価格:税別14万8000円(実売 税込み13万430円)